現下の票読みでは、共和党内で反対に回りそうなのはスーザン・コリンズ氏とリサ・マコウスキー氏という2人の女性上院議員くらい。2年前に保守派のブレット・カバノー判事が承認された際に、若い頃の性的暴行疑惑が浮上して大いに揉めた。
このときコリンズ氏は苦渋の末に承認、マコウスキー氏は棄権に回った。そしてコリンズ上院議員は今年が改選期で、民主党の女性候補サラ・ギデオン氏の挑戦の前に劣勢に立っている。しかし仮に造反が2人だけということになると、現在の共和党53対民主党47という上院の陣容から考えると、新しい判事の人事はギリギリで承認されることになる。
トランプさんはこうも言っている。この後の大統領選挙がもめた場合に、決着が最高裁に持ち込まれるかもしれない。そのとき、判事が偶数では「決められない」恐れがある。だから選挙前に9人目を選んでおかねばならないと。確かに2000年の大統領選挙では、「フロリダ再集計」という事案があって、最後は最高裁で決着した先例がある。
まじめな話、現在の8人の最高裁判事のうち、ジョン・ロバーツ長官は「穏健派保守」なので、しばしばトランプさんの期待を裏切っている。次期大統領の地位を巡る評決で、最高裁が「4対4」に割れる、というのはあり得ない話ではない。「6対3」にしておけば、保守派がセーフティリードになるから安心だという読みもあるのだろう。
実際のところ、11月3日の投票日までに、公聴会など承認を巡るすべての手続きが完了するかどうかは疑わしい。それでも、選挙後からクリスマス休暇前の「レイムダック議会」の期間中に、承認作業が完了する可能性は十分にあると言えよう。
大統領選挙前に株価が「ぶっ飛ぶ」懸念が出てきた
さて、投資家目線に立ち返ってみると、かかる政争には大いなる副作用がある。最高裁人事をめぐって議会の対立が先鋭化すると、ほかの審議がストップしてしまうのだ。たまたますでに9月22日、暫定予算案の合意ができたので、12月11日までの連邦政府予算は確保できた。これで「大統領選挙前の政府閉鎖」などという恐怖のシナリオは回避された。
しかるに「追加コロナ対策」の方はまったくめどが立っていない。5月時点で3兆ドル規模の追加財政措置を打ち出した下院民主党と、今月になって5000億ドルという「スキニービル」(文字通り「骨と皮法案」)を可決しようとした上院共和党では、「言い値」に差があり過ぎる。お互いに歩み寄ってほしいものだが、11月の選挙前には政治的打算がすべてに優先する。いわば党利党略のために、アメリカ経済が別の「財政の崖」にさらされているのだ。
政治の方が対決モードで、気がついたら株価がオクトーバーサプライズになっていた、てなことになったらどうしよう。10月のアメリカ経済は、くれぐれも慎重に見ておきたいところである(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承下さい)。
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