アメリカ大統領選挙では、選挙1カ月前の10月に、選挙戦に大きな影響を与える出来事を「オクトーバーサプライズ」という。だが9月18日に起きたことは、オクトーバーならぬ「セプテンバーサプライズ」なのではないだろうか。
大統領選「直前」に「RBG死去」の大衝撃
どういうことか。「RBG」ことルース・ベイダー・ギンズバーグ最高裁判事が、がんとの戦いの末に87歳で永眠したのである。
長らく差別の解消と女性の地位向上に努めてきた偉大なる法曹家であり、フェミニストであった。ワシントンの連邦最高裁の前には、多くの人が集まりキャンドルをともして追悼した。が、この話はそれにとどまらない。
前回の投稿で、筆者は今年のアメリカ大統領選挙は①テレビ討論会のパフォーマンス②”Black Lives Matter”の抗議運動の広がり③「郵便投票」による混乱、の3点に注目をと申し上げた。このタイミングで生じた新たな最高裁判事の任命問題は、この3つの要素が全部吹っ飛ぶほどの衝撃度を秘めている。
大統領選挙とは、所詮は4年単位のことである。どんなに嫌いな大統領でも、8年たてばかならず居なくなる(トランプさんは「3期目もやるぞ」と言っているが、それはいつもの「プロレス」と思って聞き流しておけばいい)。
ところが大統領が指名権を持つ最高裁判事は、憲法で終身という任期を規定されている。最近は50歳前後の判事が指名されることが多いので、文字通り向こう30年くらいのアメリカを左右する可能性がある。考えようによっては、大統領以上の重責なのである。
2016年の大統領選挙では、投票日の直前になって「本当はトランプなんて大嫌いだけど、最高裁判事のこともあるからまあ、行ってくるか」と義務感で投票した保守派の有権者が少なくなかった。これは日本でも同じだが、保守派の方がリベラル派よりも投票行動を直前に決める傾向がある。こういう投票は事前の世論調査には反映されず、選挙当日のサプライズの一因となった。
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