建設職人324万人「就労管理構想」の高すぎる壁 行政主導で開発した大規模システムで混乱
マイナンバーカードであれば、全国どの行政機関に持って行っても身分証明などとしては利用できるが、CCUSカードを取得しても最も基本的なサービスである就労履歴が記録されないのでは意味がない。
つまり労働者にCCUSカードの普及を図る以前に、建設許可業者にはCCUSの登録義務化を行うぐらいの環境整備を行わなければ、労働者もカードを保有しようとは思わないだろう。
当初から地方の有力ゼネコンで組織する全国建設業協会からは、大手による優秀な技能労働者の引き抜きなどを懸念して、CCUSの導入に後ろ向きの声は上がっていた。そうした建設業者が事業者登録をサボタージュすることは予想されていたが、有効な対策が講じられていなかったわけだ。
行政主導の大規模システムの困難
今回の混乱を招いた原因を国交省に質問すると「過去に前例のないシステムであり、十分な対応が難しかった」と担当者は釈明した。
筆者はこうした事態を招くことを懸念して、国交省の複数の幹部にCCUSを新規開発するのではなく、民間で実績のあるITシステムを購入することを強く勧めてきた。過去に電子行政システムの構築をいくつも取材してきたが、行政主導で開発した大規模システムで成功した試しがなかったからだ。
CCUSと同様に技能労働者を管理するシステムには、三菱商事が開発した建設業向けサービス「建設サイト」が2001年から提供されている。2015年からは子会社のMCデータプラスに移管したが、すでに144万人の技能労働者が登録済みだ。
2011年の東日本大震災では、CCUS構築を先導してきた芝浦工業大学の蟹澤宏剛教授が代表となって、除染作業員の健康管理を行うための就労履歴登録機構が設立された。この時も建設サイトをベースにシステムを開発した。
すでに実績のあるシステムを拡張してCCUSを開発すれば成功確率が高まり、しかも100万人以上の技能労働者のデータも最初から付いてくる。まさに一石二鳥と考えたのだが、実現しなかった。
とは言え、CCUSが「建設業にとって不可欠な制度インフラ」であるのなら、今後はやれることは何でもやるしかないだろう。
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