建設職人324万人「就労管理構想」の高すぎる壁 行政主導で開発した大規模システムで混乱

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国交省と建設業振興基金では、急きょ6月から対策を検討。建設業界に対して各種利用料金の大幅値上げや、開発費の追加出資を打診したものの了解が得られず、当初は8月に開催する予定の総会を延期した。

サービス内容の見直しやコスト削減により、利用料の値上げ幅を圧縮するとともに、開発費の追加出資も20億円から16億円に削減することで、何とか建設業界の了承を得ることができた。

しかし、今後も普及率が伸び悩み、利用収入が増えなければ立ち行かなくなるのも時間の問題だ。

カード取得しても就労履歴が蓄積されない

なぜCCUSの普及が遅れているのか。導入当初から建設技能労働者にとってCCUSに登録してカードを保有するメリットを感じないので「普及させるのは難しいのではないか?」との声は多く聞かれていた。しかし、実際に運用を始めると、それ以前の課題が明らかになってきた。

CCUSを導入すると、工事現場の入退場口に専用のICカードリーダーを設置してCCUSカードをタッチすることで、自動的に建設技能労働者の就労履歴が記録・蓄積されていく。現状では点呼などによる手入力で行っていた就労履歴管理が自動化され、現場を管理する元請け業者にとっては大幅な業務効率化が図られる。

労働者側にとっても現時点ではメリットを感じにくいが、CCUSに就労履歴が蓄積されていけば、将来的には技能レベルに応じた処遇改善や、建設業退職金共済事業(建退共)の手続き簡素化などが図られる、との青写真が示されていた。

しかし、CCUSに登録していない建設業者も多いために、ICカードリーダーが設置されていない現場が多い。その結果、せっかく労働者がカードを取得してもCCUSのデータベースに就労履歴が蓄積されない、という問題が明らかになった。

元請け業者も労働者の入退場管理が大変な大規模現場にはICカードリーダーを設置するメリットはあるが、戸建住宅など小規模現場に導入するのは負担が重い。

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