建設職人324万人「就労管理構想」の高すぎる壁 行政主導で開発した大規模システムで混乱

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セブン-イレブン・ジャパン、出光興産、ユニクロ、日産自動車など大手企業と提携して施設の修繕・補修サービスなどを提供するJM(東京都千代田区)でも、1万人を超える職人をデータベース化している。JMを通じて仕事の発注があるという直接的なメリットがあるから職人も登録し、スマホなどのITツールを活用して仕事をこなす。

「CCUSは職人の処遇改善を進めるうえで必要なインフラだ。JMではITツールを使って仕事ができる職人を育てており、CCUSの本格普及に向けても協力していきたい」(JM大竹弘孝社長)。今後は職人データベースをオープン化して、JM以外の仕事も職人が請けられるようにすることも検討している。

職人にとって使い慣れたスマホアプリなどを使って、CCUSのサービスも受けられるようになれば便利になる。助太刀やJMに登録した職人たちがCCUSに登録できるようになれば大幅に増えることも期待できる。

自然災害への対応機能を期待

近年、台風や豪雨などによる自然災害が増え、地震発生のリスクも高まっていると言われる。昨年9月の台風15号で大きな被害を受けた千葉県では、1年経っても職人不足などで修繕工事が完了していない被害住宅が4割近くあることが話題となった。

「地方自治体からは、どの地域にどれぐらいの建設技能労働者がいるかというデータがほしいとの要望が高まっている」とは、全国建設労働組合総連合(全建総連)元幹部でラピーダ顧問の田口正俊氏。CCUSには、将来的にそうした役割も求められるだろう。

助太刀では、9月下旬から助太刀アプリ登録事業者が災害時の支援意思を事前登録できる機能を追加し、迅速にマッチングできる環境を整備した。

JMにも提携先企業から災害対応の要請が寄せられ、職人が迅速に対応している。こうした災害対応機能を強化するためにも、民間企業といかに連携できるかがCCUS普及のカギを握っている。

千葉 利宏 ジャーナリスト

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ちば・としひろ / Toshihiro Chiba

1958年北海道札幌市生まれ。新聞社を経て2001年からフリー。日本不動産ジャーナリスト会議代表幹事。著書に『実家のたたみ方』(翔泳社)など。

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