建設職人324万人「就労管理構想」の高すぎる壁 行政主導で開発した大規模システムで混乱

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国交省・建設業振興基金では、2023年度にはあらゆる工事でCCUSを完全実施するための官民施策パッケージを策定した。まずは国直轄の公共工事でCCUSを義務化するモデル工事を導入し拡大するなど、公共工事をテコに普及を図っていく考えだ。

「これまでCCUS導入に懐疑的だった地方の有力ゼネコンも本格導入に取り組むと表明するようになった」(国交省幹部)と、徐々に風向きは変わりつつあるようだ。

確かに公共工事に関わる建設業者や労働者には普及が進むことが期待できるが、国内建設投資額の3分の2は民間工事だ。この分野で普及を進めるには具体策が乏しい。

閉鎖的な労働環境を変えたスマホ

「建設業者は優秀な職人を囲い込む意識が強いので、民間工事でもCCUSを義務付けるぐらい対策を講じなければ事業者登録も進まない」とは、CCUS向けのカードリーダーやスマホ向けアプリを提供するラピーダ(東京都中央区)の早川一郎社長。これまでCCUSの普及に取り組んできたが、業界慣習の厚い壁に阻まれてきた。

「技能労働者にも登録するメリットがないと、CCUSを普及するのは難しいのではないか」――サービス開始から約2年で13万人を超える登録事業者を獲得したマッチングアプリを提供する、助太刀(東京都渋谷区)の我妻陽一社長も厳しい見方を示す。

電気工事の管理技術者で、自らも電気工事会社を運営する我妻氏も「建設業界には囲い込む慣習が根強く、職人も元請けを超えたつながりがなかった」と語る。過去に大手人材会社が建設技能労働者の求人・転職サイトを立ち上げたが、成功事例がなかった。

閉鎖的な労働環境を大きく変えたのがスマートフォンの普及だ。今ではベテランの職人でもスマホを持っており、休憩時間などに使い方を教えてもらってアプリを使い始める職人も多いという。

従来の求人サイトと異なり、マッチングアプリは直接に仕事の依頼を双方向でやり取りできる。登録した職人にとっては目に見える直接的なメリットだ。

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