「男の育休、意味ないでしょ」と思う人の大誤解 妻を支え乳幼児期に役立つことはたくさんある

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最近明らかになったのは、産後の女性の10人に1人は産後うつを発症するということ。産後うつは、乳児虐待や本人の自殺にもつながりかねない深刻な病気です。産後うつの原因は、出産直後のホルモンバランスの乱れと、授乳などによる睡眠不足や生活リズムの乱れであると言われています。夜中の授乳と夜泣きの対応を育休中の夫が担当することは、母体保護の観点からも極めて重要なのです。そのためか、育休を取得しきちんと家事育児を行なった当事者の男性から、「男が育休を取っても意味がない」といった言葉を耳にしたことは一度もありません。

とはいえ、子育てを夫に頼らずに「ワンオペ育児」(家事育児の全てを一人でこなす状態のこと)で乗り越えた女性たちからは、「夫は役に立たない」「夫が育休を取っても子どもが一人増えるだけ」という意見が出ることもあります。実際、総務省の「社会生活基本調査」によれば、妻が仕事をしている・していないにかかわらず、六歳未満の子どもを持つ男性で家事育児時間がゼロの人は、約7割もいます(図1-2)。

記事中の図はすべて『男性の育休 家族・企業・経済はこう変わる』(PHP研究所)より

(外部配信先では図を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

しかも図を見ると分かる通り、家事育児に参画している人の割合は、2006年からの10年間でその比率がほとんど変わっていないのが現実なのです。もちろん家庭環境・労働環境によって家事育児に参画できないという男性も多いと思いますが、この「家事も育児もしない」夫たちを揶揄して、「ゼロコミット男子」や「イクジ(育児)ナシ夫」という言葉が生まれたほどです。

育休はその後のライフスタイルが変わるきっかけに

内閣府経済社会総合研究所の調査によれば、男性の育休取得が、その後の積極的な家事育児参画のきっかけになることも分かっています(図1─3)。育休中、一定期間にわたり家事育児にコミットすることで、それが習慣化され、育休取得後の家事育児時間が長くなったり、担当する家事育児の数(種類)が増えたりすることも明らかになっています。

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