「男の育休、意味ないでしょ」と思う人の大誤解 妻を支え乳幼児期に役立つことはたくさんある

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ですから、たとえ現時点で、世の男性の7割が「ゼロコミット男子」でも、育休時に男性が役に立たないと決めつけるのは早計です。育休取得は、その後も長期にわたって男性の家庭進出につながる契機となる可能性があるからです。

ところで、そもそも「ゼロコミット男子」が7割にものぼる原因はどこにあるのでしょうか。男女の性別役割分業意識などの文化的な背景や男女の学歴・所得格差など、要因はいくつかありますが、筆者が着目しているのは「知識の獲得機会の欠如」と「産後の環境」です。

まず、「知識の獲得機会の欠如」に着目している理由を説明します。日本では、男女問わず、「育児」に関して現行の義務教育・高等教育での教育機会がありません。現状は育児知識の全くない男女がいきなり親になるケースが多く、虐待が起きる要因の1つとも考えられています。虐待防止の側面からも、昨今は母子保健法が整備され、妊娠中の女性を対象とした自治体主催の「母親学級」や助産師訪問が普及するようになりました。

しかし、男性が表立って参加できる教育機会はまだ少ないのが現実です。「両親学級」と謳っている講座もありますが、その内容は母親中心の講義が多く、疎外感を感じる男性も少なくありません。

男性側の家事知識獲得機会が欠如

また、家事の知識に関しては、特に男性側の知識獲得機会が欠如しています。通常、女性は義務教育課程の「家庭科」で家事の基本的な知識を習得する機会があります。一方で、男性の年齢によっては、「男子は技術」「女子は家庭科」と分かれていた時期に育った人もいます(今は、男女ともに「家庭科」が義務教育課程に入るようになりました)。

加えて、家庭環境が影響している場合も多いでしょう。「男は仕事、女は家庭」といった性別役割分業意識が強い親のもとでは、「男子厨房に入るべからず」と息子を家事から遠ざける家庭も散見されます。こうした「上げ膳据え膳」での実家暮らしが長い男性の場合、自らの家事の知識・スキルが足りないことにさえ気づかずに、父親になる場合もあるでしょう。

ちなみに、筆者天野の夫は義務教育で家庭科を習わなかったためか、あるいは家庭環境のためか、料理はもとより、家事がほとんどできませんでした。結婚直後、夫の引っ越し荷物の底からボタンの取れたシャツやズボンが複数出てきて驚いたのですが、夫から「裁縫ができずボタンが付けられない。実は着られるシャツが減って困っていた」と打ち明けられました。

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