「男の育休、意味ないでしょ」と思う人の大誤解 妻を支え乳幼児期に役立つことはたくさんある

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あきれ気味の筆者でしたが、習っていないのであれば仕方がありません。実は男性側も家事スキルの欠如に困っていたのです。「ゼロコミット男子」は男性側のマインドセットの問題もありますが、意図せずして知識獲得の機会を得られなかったケースも多々あります。「家庭科」は、生活を営むために性別を問わず必要な科目ですが、その存在意義をまざまざと見せつけられた、筆者にとって忘れられない出来事でした。

夫婦の関係性を決めるのは乳幼児期

次に、「産後の環境」に、筆者が注目している理由を説明します。よく言われるのが、里帰り出産によって生じる夫婦間の「育児スキル」格差です。

産後の母体にとっては、慣れない育児をサポートしてくれる実母(義母の場合もある)の存在は非常にありがたいのですが、里帰り出産は育児のスタート時期にタイムラグが生じるため、夫婦間で育児スキルの差が大きく開いてしまうのです。
妻の里帰り期間中、独身時代に戻ったかのように、好きなだけ仕事や遊びに時間を使う夫もいる一方で、妻は育児と格闘する日々が始まります。こうして先に育児スキルを身につけた妻は、自宅に戻ったら、育児スキルが全くない夫とともに育児をしなければなりません。いわゆる「産後クライシス」を招く原因は、この育児スキルの差も一因だと言われています。

一方、東レ経営研究所の渥美由喜氏が示す「女性の愛情曲線」によると、子どもが巣立った後、女性の愛情が下降してそのまま「愛のない夫婦」になるか、愛情が徐々に回復して「愛のある夫婦」になるかは、出産直後から乳幼児期の夫のふるまいにかかっているそうです(図1─4)。

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また、男性の中には、妻の出産後もこれまでの働き方を変えずに(あるいは変えられずに)、夜遅くに帰宅する人もいます。残念ながら、そうした環境下で男性が育児の実態を理解するのはかなり困難です。

妻の妊娠中は育児参画に意欲を燃やしていた男性が、家事育児に関する知識獲得の機会の欠如や産後の子育て環境などが原因で意欲冷却してしまい、結果的に「ゼロコミット男子」となってしまうのは、余りにもったいないと感じます。しかし、妻の出産直後に夫が育休を取ることができ、一定期間家事育児にコミットすることが可能になれば、話は別です。

男性の育休は、妻の出産後も男性の家事育児参画が継続するかしないかを決定づける、重要な契機と言えるでしょう。

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