Knotが国産腕時計メーカーとして絶対守る牙城

上場取りやめても、顧客と取引先のほうを向く

「かっこいいプロダクト、その試作品が上がってきたときがゾクゾクする瞬間の1つ」。モノをつくることにも売ることにも全神経を注ぐ毎日だ(写真:新潮社)

また、「上場企業は株主のためにある。遠藤さんの思いで儲からない値付けをすることは今後許されなくなりますよ」ということを証券会社から言われたのも、上場を取りやめた理由の1つです。

Knotの製品は、企画段階で先にターゲットプライスが設定されます。逆に言うと、“5000円”がベルトのテーマの1つで、“5000円”をはるかに上回るような製品になってしまうのであれば、その開発プロジェクトは中止を決定します。

普通の企業は、製造コストが2000円だから売り値は1万円、原価が3000円だから販売価格は1万5000円というように原価を積み上げて値付けしていきますが、Knotは真逆。「お客さまがいくらだったら喜んでくれるか」という値段をまずつけて、それに製造コストやプロセスを合わせていく逆算するやり方をとっています。

それはリストファッションライフを楽しんでもらいたいためです。日本製の高品質な時計ベルトを、Tシャツ1枚の価格で提供することが創業以来のポリシーです。そのためには、ベルト1本がリーズナブルな価格で、気軽に買えなければ楽しめないという考え方があります。

BtoBのビジネスはだいたい製造原価率を30%以内に抑えるのが一般的な製造業の考え方とされていますが、Knotは直販なので50%でも行けます。

パートナーとお客さまとの結び目が崩れてしまう

――50%の製造原価率はメーカーとして考えるとかなり高い。その分、顧客はリーズナブルに商品を購入できますね。

はい。Knotは、お客さまに求められているから、この成長がある。お客さまに求められるか、株主に求められるか、2つに1つしか選択できないのであれば、お客さまに求められるブランド、企業を選ぼうと思いました。

『つなぐ時計―吉祥寺に生まれたメーカー Knotの軌跡― 』(新潮社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

また、職人さんたちであるパートナーとの付き合いも大切にしています。例えば1つの製品をつくる際にベルトを3社から調達するとして、A社、B社よりもC社のほうがコストは少し高いけど、C社はKnotとの取引がメインで成り立っている会社だから、他社よりも多めに発注するというようなことがあります。それは上場企業だと株主への背任行為になってしまうのです。

Knotは、ものを作ってくれているパートナーと、それを買ってくれるお客さまがいて、「Knot(結び目)」のわれわれがいる。この3つの関係で成り立っているので、上場してしまうと、この関係図が完全に崩れてしまうのです。上場したら絶対後悔すると思いました。

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