Knotが国産腕時計メーカーとして絶対守る牙城 上場取りやめても、顧客と取引先のほうを向く

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「Knot」は国産の上質な腕時計を1万円台の低価格で提供している(写真:新潮社)

彼らが培ってきた世界に誇る素晴らしい技術や素材をどうやって伝えていくかが大切です。そのためには世の中の変化を察知して、消費者の需要に対応したものを作る必要があります。情報の発信の仕方についても、例えば新聞に広告を出しても今は昔のような効果はないので、若い人をターゲットにするならデジタル媒体で伝えるなどの工夫も求められるでしょう。残すものは残しながら、変えるものは変えていかなければなりません。

――「作る」と「届ける」ということはまったくの別モノ。作り手側は、「どのような届け方をするか」ということを考える必要がありますね。

われわれはメーカーですが、製造をしているわけではありません。製造をしているのは、職人である“パートナー”。われわれの役割は、企画やお客さまとのコミュニケーション、PRなどの“ディレクション”をすることです。

日本のものづくりの素晴らしさを世界に訴えることと同じくらい重要な役目は、“たくさん売ること”です。ビジネスを作ることが、工場や職人さんの豊かさにつながるのです。

生産者と良好なパートナーシップを築く

――Knotの店舗には、時計だけでなく「MUSUBUプロジェクト」のパートナーの素材を生かしたお財布も販売されていました。

Knotで開発する製品は、作る意味や価値がないものは絶対に作りません。

お財布にも作った意味があります。

腕時計のベルトはものすごく売れていますが、時計のベルトに使う革の量は、1本300㎠ほどしかありません。例えば革の仕入先の1つである栃木レザーのベルトが1万本売れて「Knot」が繁盛したとしても、栃木レザーからしたら、1万本のベルトはたった70〜80枚の革しか売れていません。パートナーシップにおいて良好な関係を築くためには、もっと革そのものを買って、栃木レザーの売り上げも上げていきたいと考えているのです。

これは栃木レザーに限らず、時計のベルト以外のもっと面積が大きいものに、弊社のパートナーの素材を使うことができれば、彼らの売り上げはもっと上がりますので財布も手掛けるようになりました。自分たちのエゴや、自分たちだけの儲けにしかならないようなものはKnotはやらないと決めています。

Knotは、ものを作ってくれているパートナーと、それを買ってくれるお客さまがいて、「Knot(結び目)」のわれわれがいる。この3者の関係で成り立っているのです。

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