KPIをうまく使っている社長は何が違うのか? 会社と社員の好循環を作る7つのコツ

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⑤ 成功体験を早い段階で積む

組織変革などでは、よく「スモールサクセス、クイックヒット」が必要ということが言われます。小さな成功でもいいので、早い段階で成功を収めると、それが現場にとっては自信につながりますし、経営に対する信頼感の醸成にもつながるからです。

A社のケースでは、もともと赤字だったのが、早い段階でリストラなしに黒字が出たということで一気にマネジメントに対する信頼感が上がっていきました。

「ほら、これによって、こんなことができるようになるんだ」「今までのやり方だとこんな問題解決はできなかっただろう」といったように、早い段階でKPI経営の効果を目に見える形で示すことも有効です。

⑥ ITを適切に活用する

現代のビジネスはIT抜きには語れません。これを適切に用いることで、入力の二度手間などなく、スピーディに必要なKPIが収集され、皆に開示されることが理想です。

ただこれは理想ではあるのですが、いまだに数字が二重管理されていたり、エクセルなどで属人的に集計されているというケースも実際には多いものです。

ひどい場合には、そもそもKPIが測定されておらず「見える化」がなされていないというケースもあります。KPI経営以前の問題として、これは勘と経験でビジネスを行っているようなもので論外ですが、今後、企業のDXが進む中で、こうした管理手法についても同時にバージョンアップしていくことが望ましいといえるでしょう。

KPI経営は手段であり、目的ではない

⑦ KPIの限界を知る

KPIは「切れる刀」ではありますが万能ではありません。数値にしにくいソフトな要素や言葉などもやはり経営では重要ですし、動機づけについていえば、KPIに連動した評価報酬のみならず、日常のコミュニケーションや、本人の志を刺激するリーダーからの働き掛けなども非常に重要な要素となります。

KPI経営は手段であって目的ではありません。その限界も理解したうえで、リーダーシップや属人的なコミュニケーションなどとうまく組み合わせ、組織を動かす必要があるのです。

今回は7つの要素を取り上げましたが、その他にも「経営環境に合わせて柔軟にKPIを変える」等、工夫は多岐にわたります。

KPI経営をうまく回すためには、どうすれば適切な意思決定ができるか、人を動機づけられるかなど、KPI経営の根源に戻りながらさまざまな工夫を凝らすことが必要なのです。

嶋田 毅 グロービス経営大学院教授、グロービス出版局長

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しまだ つよし / Tsuyoshi Shimada

グロービス経営大学院教員、グロービス出版局長。東京大学理学部卒業、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計160万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」のプロデューサーも務める。著書に『MBA 100の基本』『ビジネスで使える数学の基本が1冊でざっくりわかる本』『KPI大全』(以上東洋経済新報社)、『グロービスMBAミドルマネジメント』(ダイヤモンド社)など。経営戦略、テクノベート・ストラテジー、研究プロジェクトなどの講師を務めるほか、各所で講演なども行っている。

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