KPIをうまく使っている社長は何が違うのか? 会社と社員の好循環を作る7つのコツ
また、KPIは単にビジネスを可視化するだけではなく、KPIを示すことで経営の意図を伝えたり、評価報奨制度と連関させることで人を動機づけるという役割もあります。必然的に人間のモチベーションやありがちな逸脱行為(売り上げを上げるために問題のある販売をしてしまう)などについても知悉(ちしつ)しておく必要があります。
つまり、ビジネスや「人」についての洞察がないと、KPI経営はうまく機能しないのです。
ちなみに、日本を代表するビール会社のD社はかつて、営業の評価を「売上高」で行っていました。その結果、期末にチャネルへの押し込み営業が横行し、それが流通チャネルでの商品の滞留、さらには味の劣化による消費者離れを招き、さらに強引な営業を必要とするという悪循環をもたらしていたのです。
また、①で紹介したC社長のケースでは、彼は元々他社で修業を積んでB社に来た後、海外事業部を立て直したり、別の被買収企業を立て直したという実績を持っていました。そうした経験に基づく、ビジネスや「人」への洞察力があったからこそ、A社へのKPI経営の導入をスムーズに行うことができたのです。
KPIは組織を潤滑に運営するうえで必要十分かつ費用対効果が高いものであることが望ましいのは言うまでもありません。
①で紹介したA社のケースでは、同業のB社が買収したという点が幸いしました。同業ですから、何が重要なKPIとなるかも推察しやすいですし、ストレッチ目標の設定なども比較的やりやすくなるからです。
逆にいえば、新規事業を始めるときや、異業種の企業を買収する際には、ビジネスの特性を理解したうえで、現場の声も聞きつつ、経営視点も併せ持ってバランスのいいKPIの設定・評価を行う必要が生じるということです。
これは実は簡単ではありません。イマジネーションを豊かに働かせ、「何をKPI(さらにはKPIに紐づいた報奨)とすれば状況が的確に把握できるか」「経営の意図が伝わるか」「社員が戦略に沿って頑張って働いてくれるか」を考えぬく必要があるのです。
設定したKPIを定期的に確認&検証し、PDCAを回すことがKPI経営の基本です。
「PDCAを回す」ことは、言うのは簡単ですが、その巧拙やこだわりは企業ごとに大きな差異が出ます。緩い会社ではそもそもミーティングの頻度が低く、また未達でもあまり責められません。そして年度末が近づくと、あわてて目標(とくに売上目標)達成にてんてこ舞いすることになるのです。
PDCAのCとAを機能させる
先に紹介したA社のケースでは、部署ごとにKPIをベースに週次で厳しくPDCAを回すことが徹底され、それがV字回復につながりました。毎週の業績報告会を兼ねたミーティングで、未達を叱る(「怒る」でない点は重要です)一方で、達成したときに褒めることで承認欲求を満たすといったバランスをとる工夫も行われました。
A社のケースではまた、KPIの未達があった場合、その理由を問い、とるべきアクションについて報告させるといったこともさせました。これがあるからこそPDCAのCとAが正しく機能し、高い成果につながっていくのです。これは長期的には問題解決能力の向上にも寄与します。
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