日本製鉄、中国メーカーの攻勢で多難な前途 橋本社長が語る日本の鉄鋼産業の生き残り策

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縮小

――日本の鉄鋼業や、日本製鉄の国内製鉄事業は縮小均衡にあります。先行きの展望は暗いのでしょうか。

縮小均衡となるのは、需要が落ちる中ではやむを得ない。開発力を含めた技術力を維持するために一定量は日本で一貫製鉄所(原料から鉄をつくり、鉄鋼製品まで製造できる拠点)を維持する必要がある。中国ができないものは日本に残れる。

今後は日本で何万トンという発想ではなく、日本と海外の連結で生産能力を考えていく。今は日本が4000万トン、海外が2000万トン。これを1億トンへ拡大していかないと名実ともトップの鉄鋼メーカーになれない。

日本の(拠点の)役割はマザーミル(高炉)としてきちんとした収益を出し、海外の展開を支えることだ。

今のままでは全体が沈没する

――国内生産体制の縮小は地域経済への影響は避けられません。製鉄所閉鎖の方針に対して、地元では反対の声も高まっています。

2023年9月末までに閉鎖する日本製鉄の呉製鉄所(広島県)(写真:日本製鉄)

地域との関係が難しいのは当たり前だが、今のままでは全体が沈没する。最大限の雇用を全国で確保するためには、競争力のない事業や製品は縮小していかないといけない。

その代わりに世界戦略を支える一貫製鉄所はもう一度新しく生まれ変わる。今後もかなりの投資をしていく。

――M&Aでの業界再編や成長戦略をどのように考えていますか。

国内でこれ以上再編統合を進める考えはない。これまでの再編統合のシナジーを出し切っていない。今回の構造改革はそれをきっちり出すということでもある。さらに国内で(業界再編)というのは頭の中にはない。海外での事業拡大は今後もM&Aで進めたい。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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