東京製鉄、電炉の雄が自動車用鋼板にかける執念 日本の電炉業界の展望を西本利一社長に聞く

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2006年に46歳で抜擢されて社長に就いた西本利一氏。トップに就いて14年が経過した(記者撮影)
日本の鉄鋼業界ではメインプレーヤーである鉄鉱石から鉄を作り出す高炉メーカーの経営が苦境に直面している。コロナ前から世界の鉄鋼需要が落ち込んでいるにもかかわらず、中国の生産拡大で原材料が高止まりする、「市況安・原料高」に苦しんでいるからだ。
一方、電気炉でスクラップを溶かして鉄を作り出す電炉メーカーは、原料のスクラップ市況が鉄鋼製品市況以上に低下しており、利益を確保できている。この先の電炉業界の展望をどう見据えているのか。独立系で国内電炉トップ、東京製鉄の西本利一社長に聞いた。

日本もアメリカのようになる

――市況動向もあり、高炉不利、電炉有利となっています。こうした構図は定着するのでしょうか。

電炉有利ではない。むしろこれまでは電炉不利の時代が長かった。

2000年代中頃の中国バブル(中国需要の爆発的な増加)の初期は良かったが、後半は電炉が不利になった。スクラップが高く、高炉の原料(鉄鉱石や原料炭)が安かった。2010年前後にアジアで多くの電炉が立ち上がったが、ほとんど休止に追い込まれた。当社が孤軍奮闘しているくらいだ。

一方、世界に目を向けるとアメリカはすでに(鉄鋼生産における)電炉の比率が70%近い。ニューコア、スチールダイナミクス、ビッグ・リバー・スチールといろんな会社がある。

こうした電炉会社の躍進は鋼板に進出したことだ。電炉といえば棒鋼だったところから、(建築、土木に使う)H形鋼、さらに鋼板を作った。日本もそうならざるをえない。

――しかし、日本は電炉比率が20%台。依然として高炉中心です。

コロナ後の「新常態」とどのように向き合っていくべきなのか。「週刊東洋経済プラス」では、経営者やスペシャリストのインタビューを連載中です。(画像をクリックすると一覧ページにジャンプします)

日本も粗鋼の内需が年間8000万トンあれば高炉中心でかまわない。(実際は)内需が縮小していく中で高炉は輸出に頼ったわけだが、外需依存で産業を成り立たせるのは難しい。特に鉄鋼は国の基幹産業であり、新興国が成長しようとするとまず鉄鋼業を育成するからだ。

わざわざブラジルやオーストラリアから鉄鉱石や原料炭を持ってきて、日本で鋼材を作って輸出する必要はない。需要国で作ってもらえばいい、という当たり前のことに(高炉が)気がつかれた。

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