東京製鉄、電炉の雄が自動車用鋼板にかける執念 日本の電炉業界の展望を西本利一社長に聞く

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先日、日本製鉄やJFEホールディングスが国内生産体制の再編、高炉の休止に踏み出されたのは自然なことだ。彼らも遅かったと思っているのではないか。

――高炉は地域の経済や雇用を支えているため、リストラは簡単ではありません。

会社の規模は違うが、当社では私の代だけでもスクラップ&ビルドは相当やった。高松工場を閉鎖したし、岡山では一部ラインを休止した。一方、新しい設備も立ち上げた。田原工場(愛知県)は厳しいリーマンショック後に立ち上げた(2009年11月)から大変だった。

にしもと・としかず●1960年生まれ。1984年東京製鉄入社、1999年岡山工場製鋼部長兼圧延部長、2004年高松工場長、2006年から現職(記者撮影)

――日本で電炉がシェアを拡大するには何が必要ですか。

スクラップからリサイクルできる品種の高度化だ。それを国内で消費していきたい。

電炉製品が主力である建築用鋼材の需要は先が見えている。丸棒もH形鋼もそうだ。

H形鋼では国内トップシェアだが、市場が拡大することはない。一方、鋼板はわれわれの生産規模からみると十二分に市場が大きい。(競争の激しい)レッドか(競争が少ない)ブルーかはわからないが、オーシャン(大きな市場)であることは間違いない。

日本のスクラップを有効活用したい

日本ではスクラップが有効活用されずに輸出されている。そうしたスクラップを鋼材に活用できるのが、自動車用の熱延鋼板だ。先代社長の時代から挑戦を続けてきた。あきらめず、将来はここを拡大していきたい。

――アメリカでは自動車用鋼板にも電炉の製品が使われているのですか。

アメリカでも自動車用は電炉製品がまだ少ない。高炉にとって最後の聖域だ。

ただ、鋼板需要のすそ野は広く、エネルギー用の設備などにたくさん使われている。だが、少しずつ電炉製品も自動車用に入っており、さらに電炉各社がすごい投資をしている。

「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では「自動車用鋼板でどのように利益を出すか」「コロナ後の経営の在り方」についても詳細に語っている。
山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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