池上彰が解説「総理大臣という仕事の基礎知識」

分刻みで予定をこなすハードな「役割」の実際

池上彰さん(画像提供:KADOKAWA、撮影:星智徳)

では、総理大臣はどんなときに交代するのか。日本では長らく総理大臣が頻繁に入れ代わってきましたが、安倍総理は史上最長の在任期間を更新しました。

実は、総理大臣には任期がありません。衆議院議員の任期は4年ですから、任期が満了すれば自動的に総理も退任します。でも、選挙の後に再び総理大臣に選ばれれば、総理を続けることができるのです。

総理大臣が交代するタイミングは、政党の総裁の任期と深い関係があります。例えば、自民党総裁の任期は連続3期9年まで。先日辞意を表明した安倍総理も、最大で来年9月までの任期を終え、総理大臣の座を降りる予定でした。

「首相」と「大統領」のそもそもの違い

ところで、総理大臣のことを「首相」と呼ぶことがあります。首相とは、大臣たちを短く指す言葉「相(しょう)」のトップという意味です。ただ、外国にも首相がいますので、日本のメディアはそれと区分するために、日本の首相を「総理大臣」と呼ぶことが多いのです。

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世界各国を見渡すと、大統領がいる国、大統領がいなくて首相がいる国、大統領と首相がいる国などに分かれますが、そもそも「首相」と「大統領」ではどちらが“偉い”のでしょうか。

答えは「大統領」です。大統領とは「国家元首」であり、その国を代表する人物です。これに対し、首相は「行政の長」という立場です。そこで、国家元首である大統領がいて、その下に首相を置く国もあるわけです。首相だけの国の場合、国家元首として国王や女王が存在します。

大統領と首相の力関係は、国によってさまざまです。大統領が政治の実権を握る国もあれば、大統領は国家元首というだけで、政治の実権がない国もあります。国民の直接選挙で選ばれる大統領は強い権力を持ち、議会で議員によって選ばれる大統領は、実権のない象徴的な存在だったりします。

日本の憲法では、天皇は国家元首と定められているわけではありませんが、海外からは国家元首としての扱いを受けています。海外から見れば、日本の政治の実権は首相にあり、天皇は「事実上の国家元首」、ということになっているわけです。

以上、この記事では、先日体調を崩して無念の辞意を表明した安倍総理のニュースを見聞きした際にふと頭をよぎる「総理はどれだけ忙しいのか?」という素朴な疑問を発端に、最低限の“そもそも”を解説しました。

世の中では「ワークライフバランス」が叫ばれてはいるけれど、そんな世の中に整えていく日本政府の舵取りを担う総理大臣は、日々激務をこなしています。過去には在職中に亡くなった総理もいるくらいですが、まさに気力・体力がないと務まらないハードな仕事なのです。私たちは、その点もちゃんと知っておくべきでしょう。

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