"出遅れ野球リーグ"が見据える11年越しの悲願 関西独立リーグは「普通の独立リーグ」になるか

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兵庫ブルーサンダーズの川崎大介社長(写真:筆者撮影)

「兵庫県三田市に選手寮があるんですが、大家さんや地域の人がいろいろ面倒を見てくださって、バッティングゲージまで無償で作ってくださいました。地域の支援あっての独立リーグだと思います」

こう語るのは、昨年、兵庫ブルーサンダーズ球団社長に就任した川崎大介だ。同球団の監督は元阪神の橋本大祐。06BULLSとともに初代関西独立リーグを知っている、古株の球団だ。

2013年に学校法人芦屋学園と提携し、芦屋大学や芦屋学園高校の野球部を球団の2軍、3軍にした。当時、筆者は芦屋学園の幹部から「甲子園とは別の高校生の舞台をつくる」と聞いていた。

しかし、これが日本野球連盟(JABA)の規則に抵触するため、リーグ内に反対意見が出て、初代関西独立リーグが分裂するきっかけとなった。以後、このチームもビジネスモデルが定まらず、迷走したが、経営陣も変わって徹底的な地元密着へと舵を切った。

「今季は長く試合ができなかったので、入場料収入はなくなり、地域の野球教室もできなくなりました。でも、スポンサー企業との信頼関係はつなぐことができたので、何とか球団を維持できています。

うちは再生途上です。派手なことはできませんが、できることを一つひとつやっていきたい。お世話になっている人はたくさんいるので、それにお応えしたいですね」(川崎氏)

スポンサー依存から地域密着へ

和歌山ファイティングバーズの田所洋二代表(写真:筆者撮影)

和歌山ファイティングバーズは2017年にできた新球団。監督は元日本ハムの川原昭二だ。

和歌山県田辺市を本拠として発足したが、2019年限りで運営会社が撤退。新たに東京のベンチャー企業がオーナーとなり、田辺に運営会社を設立した。

しかし、スポンサーの多くが手を引いた。独立リーグのユニホームは大小さまざまなスポンサーのロゴで埋め尽くされているものだが、和歌山の場合、ロゴはヘルメットとホームユニホームに1社のみ。

「球団は地元の応援なくしては存続できません。現在スポンサーは限られていますが、応援したいと声をかけてくださる方が徐々に出てきました。地元企業の支援をいただきながら、地元に根差した地域貢献でチームを運営しようと考えています」

昨オフからチームを預かる球団代表の田所洋二はこう語る。宮城県山元町出身。現在も中学硬式野球のリトルシニア関東連盟の審判・理事を務めている。今は単身赴任で田辺在住だ。

「新型コロナ禍で、選手の収入はほぼ途絶え、生活資金も道具を購入する費用もなくなりました。野球以前に選手の生活をどうするかが課題でしたが、地元の農家やスーパー、建設会社などが『うちでよかったら働いてみないか』と声をかけてくださり、梅やミカンの収穫などの仕事をさせていただきました。

その恩返しとして、地元の名産物を全国に紹介したいと思っています。物産売買のお手伝いから、運営資金と雇用を生み出したい。選手は2年平均で辞めます。全国から集まってきた若者は、高齢化が進む和歌山にとっても地元の財産です。雇用を生み出すようなビジネスモデルを創出します」(田所氏)

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