半沢、ナギサ、MIU404「TBSドラマ」が圧勝する訳 誰もが平等に幸福になれる世界描き心の支えに

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だからこそ、金曜10時という放送時間は、他局の金曜ロードショーが人気映画(主にジブリ作品)を放送すると視聴率争いで苦戦することが常だが、『MIU』はその前例を覆して大健闘。とりわけSNSでの盛り上がりが大きく、ストーリーや登場人物にどっぷりハマるファンの多さを誇っている。

こうして日、火、金……と3作は、相談したわけではないと思うが、結果的にみごとな連携で視聴者を癒やしている。

『MIU404』で、正規労働では給料が安く夜の仕事をせざるを得なかった麦が「悪い人が捕まって。頑張ったら報われて。正しいことをした人が後悔しないで済む世界」と語ったとき、綾野剛演じる伊吹が街の明かりを見ながら「窓のひとつひとつに人がいて、う〜ん 何つーかな……みんな暮らしてるんだなあって」と言う。それを受けて女性が「機捜のみんな(伊吹たちのこと)が守ってる街だね」としみじみする場面があった(9話)。

これは、『半沢直樹』が、2013年に放送された第1シリーズの第5話、半沢が妻の花(上戸彩)と街の光を見つめながら語った「あの小さな光のひとつひとつのなかに人がいる。おれはそういう人たちの力になれる銀行員になりたい」というセリフと近い。さらに前述した「正しいことを正しいと言えること」「組織の常識と世間の常識が一致していること」「一生懸命働いた人が報われること」の三原則は、『MIU』の「悪い人が捕まって。頑張ったら報われて。正しいことをした人が後悔しないで済む世界」も近いものがある。

3作ともストレートな思いを言葉にしている

◯「正しいことを正しいと言えること」「組織の常識と世間の常識が一致していること」「一生懸命働いた人が報われること」(半沢直樹)
◯「悪い人が捕まって。頑張ったら報われて。正しいことをした人が後悔しないで済む世界」(MIU404)
◯「あなたは立派な努力家です」「あなたはほんとうに頑張っています」「陰ながら応援しています」(ナギサさん)

3つのドラマはどれもじつにストレートに思いを言葉にしている。この街で、この日本で、誰もが平等に幸福になれる世界を、TBSドラマはこの夏、繰り返し繰り返し、描き、働く者たちの心の支えになっていた。

『ナギサさん』は9月1日(火)、『MIU』 は9月4日(金)に最終回を迎える。『半沢』も9月中には終了する。この3作が終了してしまうのはとても惜しい。TBS の秋ドラマはどこに着眼していくのか、動向が気になるところである。どうかまた私たちに癒やしと希望を与えてくれますように。

木俣 冬 コラムニスト

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きまた ふゆ / Fuyu Kimata

東京都生まれ。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。

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