半沢、ナギサ、MIU404「TBSドラマ」が圧勝する訳 誰もが平等に幸福になれる世界描き心の支えに
『半沢直樹』があえて社会悪を戯画的に描き、ストレス倍増させた後にすかっとドンデン返し、そのギャップの気持ちよさが魅力とすれば、『ナギサさん』は最初からストレスを省いている。これについては、「『家政夫ナギサさん』に日本人がハマる納得の訳」(2020年8月18日配信)でも書いたが、今一度、おさらいすると、パワハラ、モラハラいっさいなく、人間関係のいざこざがなく、登場人物に悪人がいない。恋もおしゃれも仕事も自由にさせてもらえる世界が『私の家政夫ナギサさん』。
仕事一筋で家事に手がまわらない主人公(多部未華子)が雇った家政夫ナギサさん(大森南朋)はすこぶる優秀で、部屋だけでなく彼女の心の散らかりも片付けてくれる。
ドラマの1話で最も注目されたのは、頑張っていたプロジェクトで成果が出せず落ち込んでいた主人公に、部屋がこれだけ散らかっているにもかかわらず仕事の資料だけはまとめて置かれていることにナギサさんが気づき、「あたなは立派な努力家です」「あなたはほんとうに頑張っています」「陰ながら応援しています」と認めてくれる場面だった。家事ができないのは仕事に力を注ぎ込んでいるからで。だからこそ、その頑張りを認めてもらえることがなによりのねぎらいであるという働く者の気持ちをよくわかったこの展開によって、『ナギサ』人気は一気に弾みがついた。
恋も家事もあとまわしてまでも頑張っていることが報われたい。ドラマのいいところで流れるあいみょんの主題歌「裸の心」には「この恋が実りますように」という歌詞があるが、恋する想いも、仕事の頑張りも、等しく報われたい。やさしい歌声がそんな心をそっとなでてくれる。
1週間、働きづくめで、心身ともに傷つき、ドロのように疲れた金曜の夜、『MIU404』が安定剤のように効く。綾野剛と星野源演じる刑事の優しき正義に触れればたちまち、快眠、土日の休みに入ることができる。
あの「逃げ恥」で注目された脚本家のオリジナルドラマ
『MIU404』は『逃げ恥(逃げるは恥だが役に立つ)』で一躍注目された脚本家・野木亜紀子のオリジナルドラマで、綾野剛と星野源が機動捜査隊のバディに扮し、犯罪を未然に防ごうと奮闘する。
未成年や女性、外国人労働者など生きづらさを抱えている人たちがいやおうなく、犯罪に巻き込まれそうになるところに主人公たちが手を差し伸べ寄り添ってくれる。
8月21日に放送された第9話では、犯罪に巻き込まれ命を狙われている女性・麦(黒川智花)が「悪い人が捕まって。頑張ったら報われて。正しいことをした人が後悔しないで済む世界」を夢見る。
これは極めて真っ当な要望だが、これが満たされないのが今の世の中。だからこそ、こういう願いをまっすぐに発して、主人公がそれを叶えようと頑張るドラマに見ているほうはホッとするのである。たとえ悲しい結末になっても、主人公たちが無念をちゃんと受け止めてくれることで報われる。
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