町のスーパーを全国区にした26歳社長の人間力 「フルーツサンド」がバカ売れ、東京にも出店
大山さんは店に足を運ぶ客に名前を聞き、その日の会話の内容や特徴をすべてメモにとった。そして、次に来店したときには名前で呼んだ。この日、別の売り場で客の名前を呼び、親しげに話すスタッフの姿も見られた。こんな光景はほかのスーパーでは見たことがない。聞いてみると、スタッフも大山さんを見習って、名前を覚えるようにしているという。
近頃は“付かず離れず”のスマートな接客をよしとする向きがあるが、ここは真逆。ひと昔前の八百屋や魚屋のようなベタな雰囲気。しかも、見てのとおり、大山さんはかなりのイケメン。年齢に関係なく、名前で呼ばれてうれしくない女性はいないだろう。当時は近所に住む高齢の客が来店することが多かったため、自分の孫に会いに来る感覚だったと思う。
「孫が店を継いで頑張っている、というのは伝わったと思います。しかし、新規のお客様を呼び込まないことには先細りしていくのが目に見えます。そこで、インスタの公式アカウントを開設するのと、その時季のオススメ商品や私のお客様への思いを手書きでつづった『ダイワ新聞』を毎月発行することにしました。
ところが、スーパーの事務所にはコピー機がなかったんです(笑)。自分の給料から5万円を下ろし、それを握りしめてコンビニで5000枚印刷しました」
夜の7時半頃に店が終わり、それから事務仕事と夕飯を済ませて9時、10時から店周辺の住宅に「ダイワ新聞」のポスティングをした。配り終えるのは深夜2時になることもあった。そして、翌朝5時には市場へ仕入れに行く、という具合に2、3時間しか睡眠が取れない日々が続いた。
そんな努力が報われたのか、徐々にではあるが客足が伸びていった。新聞に「えびす券」というクーポンを付けて、来店時にサイコロを振ってゾロ目が出たら野菜がもらえたりするミニイベントを開催したのだ。
これにより、小さな子ども連れの若い母親の姿がよく見られるようになった。それまで1日の平均来店数が200~250人だったのが、300人を突破した。1日の売り上げもプラス10万円となり、このペースで行けば累積していた年間300万円の赤字を食い止められるまで持ち直した。が、大山さんは決して満足することなく、次の一手を考えていた。
店の前に100人の行列を作りたい!
「たこ焼き屋をやっていた頃は、行列ができるのが当たり前だったんですよね。目標として掲げた、店の前に100人行列を作るには、夏に向けて何か新しい取り組みをしなければ到底ムリだと思いました。たこ焼き屋で夏場はかき氷を出していたことを思い出しました。しかし、どうせやるならどこにもない、八百屋らしいかき氷を作ろうと」
大山さんが考案したのは、氷の上に茹でたホウレン草とニンジン、スライスしたキュウリとトマトをのせてドレッシングをかけた「野菜のかき氷」。野菜にちなんで831円で出した。やはりというか、当たり前というか1つも売れなかった。
そこで野菜ではなく、果物を使うことに。とはいえ、フルーツを使ったかき氷はどこにでもある。大山さんはインスタのフォロワーに意見を求めた。当時、フォロワーは400人程度だったが、親切にアドバイスをしてくれた。
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