感染予防は現場任せ「TVドラマ」のずさんな実情 このままでは地上波放送がなくなりかねない

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そして、このままでは誰でも見られるドラマが地上波からなくなり、Netflixなどの有料ドラマばかりになる危険性があるのではないか、とAさんは指摘する。

「いま撮影する意味が本当にあるのかを局には考えてほしい。キスシーンはどうするのか。乱闘シーンはどうするのか。感染対策という意味ではバラエティ番組と違って、あまり工夫のしようがないんです。

それを強行して、もし放送中止などという事態になったら『やっぱりドラマはリスクが高いからやめておこう』ということになり、今後、地上波からドラマが消えていく可能性があると思っています。そうでなくても、出演者のスキャンダルでいきなりお蔵入りになったりするケースも増えています。

それに、地上波でドラマを作って儲かっている制作会社の話は聞いたことがありません。労多くして実入りが少ないけれど、ステータスのために制作を続けている会社が多いと思います。2時間ドラマなんか、かつての半額くらいに予算が減っています。セットすら組めない状況です。

この状況で、感染対策など無理難題ばかり言われるのであれば、どんどん地上波への制作会社の期待値は下がっていくばかりです。予算のことを考えても、Netflixなどのお金があるほうにドラマがシフトしていく可能性が高いと私は思います」

職人たちが訴える「改革」の必要性

Aさんも、Bさんも、これまで日本のドラマ業界を支えてきた職人である。そして、彼らはドラマの仕事を心から愛して、献身的に働いている。最近は韓国ドラマに押されぎみではあるが、日本のドラマはアジア地域をはじめとして海外でも高い評価を受けている。いわば、日本が世界に誇るべき文化の1つであると言っていいだろう。

新型コロナの問題を契機に、日本のドラマが衰退するようなことは、できれば避けたほうがよいのではないかと私は思う。そのために何をすべきか、テレビドラマ業界が一丸となって改革に取り組む時期が来ているのではないだろうか。

最後にAさんはこう訴えた。

「結局、日本にはちゃんとしたドラマのプロデューサーがいないんだと思います。お金の計算ができる人がいないんです。局員には、企画力やキャスティング能力がある『企画プロデューサー』というべき人はいるが、お金の計算はできない。制作会社のプロデューサーも、経費をいかに削減するかということに四苦八苦しているだけです。

ずいぶん前に局が決めた予算の相場に沿ってドラマを作っているだけでは、日本のドラマは先細りです。もっとちゃんと『いくらお金をかければ、どんなクオリティのものが作れるか』を考えて、ちゃんとドラマでお金を稼げるプロデューサーが日本のドラマ業界には必要なのです」

本連載「テレビのミカタ」では、匿名であなたの置かれている現状を語ってくれるテレビ関係者からの情報・相談を募集しています(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
鎮目 博道 テレビプロデューサー、顔ハメパネル愛好家、江戸川大学非常勤講師

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しずめ ひろみち / Hiromichi Shizume

1992年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなど海外取材を多く手がける。またAbemaTVの立ち上げに参画。「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、多メディアで活動。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルのメディアとしての可能性をライフワークとして研究する。近著に『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社・2月22日発売)

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