「とにかく無責任だと思いますよ。『個人で対策しろ』というだけですもんね。予算も人員も増えませんし、全部僕たち現場にシワ寄せが来るんです。局がいま予算を増やせないだろうなというのも理解できますから、国からの支援が必要だと思います。映画には文化庁の支援があるのに、テレビやインターネットには支援がないのはおかしいと思います」
彼らによると、現場がいまいちばん頭を抱えているのは「10月開始のドラマの撮影がもし第2波で止まってしまったらどうするか」ということだ。
実は、第1波の直撃を受けた「4月開始のドラマ」には、とある幸運な事情があったので助かったという。それはオリンピックだ。Aさんがこう説明する。
「ドラマは3カ月が1つの単位となって放送されていますが、7月から9月までは東京オリンピック関連の番組を放送する予定だったので、あまりドラマの放送枠は設定されていませんでした。だから4月の撮影チームを維持したまま、スケジュールをずらすことができたんです。
でも、10月開始のドラマに関しては状況はシビアです。もし撮影が途中で止まれば、放送をずらすことはできません」
ドラマの企画は、場合によっては半年から1年前には決定されるなど、かなり前から決まっている。主役級の出演者のスケジュールも、かなり前から押さえられている。
そうした中、もし10月開始のドラマの撮影が途中で止まれば、4月ドラマのように放送を延期することは難しい。1月からのドラマが始まってしまうからである。場合によっては番組自体が中止になって「飛んでしまう」危険性もあるのだ。
疑心暗鬼が広がる撮影現場
「番組が飛ぶことを恐れて、感染者が出ても秘密にする人がいるかもしれません。出演者のスケジュールや、営業・スポンサーの都合を優先して、撮影が強行されるかもしれません。
感染者が出たときにどうするかのマニュアルには『責任の所在はどこにあるか』については何の言及もないのです。複数の現場で陽性者がすでに出ている、というウワサも出回り始めていて、疑心暗鬼になっているのです」
Aさんによると、前回の撮影自粛では、制作会社に入社したばかりの新入社員が、何も仕事をすることなく、いきなりクビになったケースもあったいう。年収がすでに半減に近い状況になっている人もおり、業界を去る若手も増えつつあるようだ。何か業界全体で対策を取らないとドラマの未来が危うくなってしまう、と危惧する。
「昔からトップダウンが得意な業界なんです。だから、民放連(日本民間放送連盟)なりの団体が、トップからいろんな対策を指導してほしいんです。ボトムアップはダメなんです。下からいくら言っても、聞く耳を持ってくれません。スケジュールの見直しを進言してクビを切られた人もいると聞いています」
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