日テレとテレ朝、明暗を分ける決算のある数字 「量から質」へ広告のターニングポイントがきた

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コロナ禍で広告出稿が大きく減ったテレビ各局の決算から、放送業界のこれからを読み解きます(写真:hamahiro/PIXTA)

コロナ禍における民放の厳しさは、テレビを観ていれば感じるだろう。公共広告が一時期多かった。最近はどうも番宣が多い。TVerやHulu、Paraviなどテレビ局自身のサービスCMがやたら目につく。出稿が減ったせいで、仕方なく差し替えたCMがこれまでになく増えている。企業が広告出稿を手控えた影響が目に見えて出ているのだ。通販CMが増えたことにもその苦境があらわれている。おそらく、出稿してくれさえすればありがたい、というようなところだろう。

そんな中、8月6日に在京キー局の2020年4~6月期(第1四半期)決算が出そろった。キー局はどこも認定持株会社制を導入してホールディングス化している。不動産事業など放送外のさまざまな事業をやっているので、グループ全体の数字を見ると放送事業そのものの数字が読みとりにくい。

そのため、ここでは各グループとも核となるテレビ局単体の数字の中から、広告収入だけを取り出してみた。コロナ禍で広告出稿が大きく減ったことを数字で確認してみよう。

スポット広告収入4割減の衝撃

テレビ局の広告収入は、番組に提供するCM枠である「タイム」と、番組と番組の間にランダムに流れる「スポット」に分けられる。各局とも分けて数字を決算説明資料に載せているので、それだけを並べて表にしてみた。

※単位:百万円
(出所)筆者作成

どの局も一様に大きな痛手を受けているのがわかる。まずスポットが激しく下がっており、どこも前年比約3割減。日本テレビは月ごとの増減も発表しており、5月は前年同月比40.2%減、6月は47.5%減と衝撃的な数値になっている。他の局もおそらく似たような数値だろう。もちろんキー局だけでなく、日本中のテレビ局が6月はスポットが前年比40%前後ダウンしていたと聞いている。

スポット4割減が見えてきた5月辺りは、「いつまで続くのやら……」という嘆きが業界中から聞こえてきたが、そこには「秋口にはピークを過ぎるのでは?」との期待も感じられていた。だが今や、今年いっぱいこんなペースで続くことを誰しも覚悟している。第1四半期の数字は、今年度ずっと同じような状況で続く可能性が出てきた。

それだけでは済まない。第1四半期のタイムはマイナス10%程度の痛手で済んでいる。日テレにいたってはほとんど下がっていない。番組提供は2クール(6カ月)単位の契約が多いので、大きく下がらずに済んでいたのだ。だがいま、業界中で静かな悲鳴が湧き起こりつつある。10月期に提供を降りるスポンサーが出はじめているからだ。ということは、第2四半期以降はタイムも10%ダウンでは済まない可能性が高い。

日テレも変化ナシではいられないのではないか。 コロナ禍が経済に影響を及ぼしはじめた頃、リーマンショック並み、いやそれ以上かもとの声が聞こえていた。いま、それが本当になりつつある。放送業界はリーマンショックを超える未曾有の危機に見舞われる。

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