送りバントを妄信する日本球界が気づかぬ現実 野球離れを加速させる「データ野球」の軽視姿勢

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野球は「数字のスポーツ」である。19世紀半ばには、すでに野球の記録方法が考案されていた。

早い時期から野球ではリーグ戦が行われてきた。1カ所ですべての試合を見ることが可能なトーナメントとは異なり、リーグ戦は複数の球場で同時に行われることが多い。そのデータを比較するために「野球記録」が発達した。

驚くべきことに、初期の段階でヘンリー・チャドウィックによって「打率」「防御率」が生まれている。以後、野球界は膨大な数字とともに発展した。

かつてアメリカでは4年に1度、マクミラン社から「ベースボールエンサイクロペディア」という記録集が発行されていた。19世紀後半以降、MLBの公式戦に1試合でも出場した選手の成績を網羅した記録集だ。

日本にも輸入され、筆者は今はなき銀座のイエナ書房で購入していた。1996年の第10版にHideo Nomoの名前が載ったときには感動したものだ。

この3000ページ近い大著は、野球記録を大事にしてきたアメリカのファンの愛の結晶ともいうべき本である。ほかにも多くのMLBのレコードブックが発刊され、多くの野球記録ファンを醸成してきた。セイバーメトリクスは、こういう形でMLBの公式記録に誰でもアクセスできることを前提として発達した。

セイバーメトリクスが導き出した驚きの結論

セイバーメトリクスとは、ビル・ジェイムズらが創設したアメリカ野球学会(Society for American Baseball Research)の略称SABRと測定基準(Metrics)を組み合わせた造語である。

前出のOPS(On-base plus slugging)は初期の代表的な指標だ。出塁率+長打率という簡単な数式でありながら、貢献度の高い打者を評価する有効な指標となった。

OPSは考案されて30年近いが、MLBの公式サイトに表示されるなど、今でも信頼性が高い。はるかに複雑な数式を用いてはじき出されるRC(Run Create)やWAR(Wins Above Replacement)と、打者のランキングがほとんど同じになるからだ。

初期のセイバーメトリクスは、野球記録や統計学の知識があれば、誰でも新たな指標を作ることができた。1990年代に入って表計算ソフトMicrosoft Excelが普及したことも大きかったと思われる。

セイバーメトリクスは野球界にさまざまな波紋を巻き起こしてきたが、その中で最もインパクトが大きかったのは、20世紀末にボロス・マクラッケンが発表した「BABIP(Batting Average on Balls In Play)」だろう。

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