小売業がNYからこぞって撤退し始めているワケ もはや旗艦店をマンハッタンに置く必要ない

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ワインスタイン氏は「ニューヨークでビジネスを行う理由が見つからない」と語る。「フロリダでも単位面積当たりでニューヨークと同等の売り上げを稼ぐことができる。おまけに経費も圧倒的に少ない。これまでマーケティングのためにはブランディングや立地が重要という考えでやってきたが、ニューヨークのばか高い出店コストはもはや割に合わない」。

新型コロナの封じ込めに成功したニューヨークでは経済活動の再開が徐々に進められているが、それでも不吉な兆候が見られる。一部の全国ブランドがこの街に見切りをつけ始めているのだ。

ニューヨークに集まる多数の旗艦店やチェーン店、有名レストランが桁外れに高い家賃やその他のコストを甘んじて受け入れてきたのは、ニューヨークという都市が世界的なブランド力を持ち、大量の観光客と通勤客を確実に吸い寄せてきたからだ。

ところが、この数カ月でニューヨークは様変わりしてしまった。

ソーホーから5番街、マディソン・アベニューにかけて店が立ち並ぶマンハッタンの目抜き通りは、以前とは打って変わって今ではほとんど人を見かけない。出勤する会社員は激減し、富裕層の多くは別荘に避難した。店の多くは休業したままで、完全に店をたたんだところも少なくない。営業している店も客足は低迷している。

5番街にあるユニクロの店舗(Hiroko Masuike/The New York Times)

ヘラルドスクエアにあるヴィクトリアズ・シークレットの旗艦店は休業に入ってから4カ月たつが、その間、毎月93万7000ドル(1億円弱)の家賃を支払っていない。同ブランドの親会社は先日、店舗物件のオーナーに法的文書でこう伝えた。「小売業がコロナ前の状態でニューヨーク市に戻れるようになるには、あと数年はかかるだろう」。

J.C.ペニーとニーマン・マーカスはマンハッタンの2大ショッピングモールの主要テナントだが、少し前に連邦破産法の適用を申請し、これら店舗の閉鎖を発表した。ニーマン・マーカスは高級モール「ハドソンヤード」の目玉として昨年、マンハッタンに初出店したばかりだった。

投資アナリストらによると、シェイクシャックやチポトレ・メキシカン・グリルなど一部の人気チェーン店では、ニューヨークにある店舗の業績はほかの地域以上に落ち込んでいる。ニューヨークでは、サブウェイの店舗がここ数カ月で何十と閉店になった。ル・パン・コティディアンは市内27店舗のうち、いくつかを完全に閉めた。ほかの店舗も街の人通りが増えるまで閉鎖する計画だと、同チェーンの親会社オーリファイ・ブランズのアンドリュー・スターン共同CEOは話す。

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