小売業がNYからこぞって撤退し始めているワケ もはや旗艦店をマンハッタンに置く必要ない
ロックフェラーセンター近くにあるギャップの店は依然として休業が続いており、月額26万4000ドル(約2800万円)の家賃が未払いとなっている。レストランチェーンのTGIフライデーズはアメリカの他地域では営業を再開したが、ニューヨークの一等地(ロックフェラーセンター近くとタイムズスクエア内)にある2店舗は今も閉まったままだ。
「飲食業界の誰もが深刻な苦境に立たされている」。こう語るのは、マンハッタン南部を拠点とするヘイアー・パフォーマンスのレストラン・コンサルタント、ビン・マッキャン氏。「これはニューヨーク市全体に言えることだと思う」。
家賃不払いを決め込む有名ブランド
不動産オーナーからは、全国ブランドの一部がコロナ禍に乗じて賃料未払いを決め込んでいるとして、テナントを提訴する動きが出始めている。
ヘラルドスクエアの店舗をヴィクトリアズ・シークレットに貸しているニューヨークの不動産大手SLグリーンの弁護士、スティーブン・マイスター氏はこう話す。「SLグリーンをはじめとする市内の家主はこの危機に際し、雇用とニューヨークの税収を守るべく、大小さまざまな小売業者と協力し合ってきた」。
「だが、」と同氏は続ける。「ヴィクトリアズ・シークレットは数十億ドルという売上高を誇る上場の複合企業であるにもかかわらず、コロナ禍に乗じて契約で定められた賃金支払いの義務を回避しようとしている」。
本紙(ニューヨーク・タイムズ)はヴィクトリアズ・シークレットの親会社エル・ブランズにコメントを求めたが、回答はなかった。
一方、ハドソンヤードの開発を手掛けたリレイテッド・カンパニーズの広報担当者は、ニーマン・マーカスが閉店し、景気が悪化している中にあっても、ニューヨークの小売りの先行きを楽観している、と話す。