「新型コロナ問題」と「経済学」に共通する難題 「専門家」「素人」「メディア」それぞれの責任

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この点で、今回のコロナウイルスに関する専門家と経済学の専門家の位置づけとには共通する部分がある。

どれだけその専門知が高度な水準に達していようとも、それが現実の複雑さにまだ十分に対応できていないのであれば、専門家はその主張においてもっと慎重かつ謙虚であるべきではないだろうか。

「専門知の限界」を、政策決定者である政治家や一般市民に対して、正確に説明する努力をすることも、専門家の責務であろう。

経済学者もその専門知に基づきこの20年ほどの間に採用されてきた「インフレ目標」、「量的緩和政策」といった金融政策上のさまざまな施策について、そのアイデアがもたらす結果が非常に不正確で幅の広いものであることを、もっと強調すべきであったように思われる。実際にその結果は経済学が予測したとおりにはなっていないケースが多いのである。

「専門知の限界」を理解しつつ政策を決定したか

コロナ問題が世界的に拡大して以降、疫学的にも経済的にも、さまざまな施策がすでに各国で決定され実行に移された。

だが、専門家が提供した知識、情報がどの程度まで有効であったのか。そして、政策決定者側は「専門知の限界」ということまで含めて十分に理解したうえで、その政策決定を行っていたといえるのか。あるいは、専門家と素人の間で本当に適切な通訳ができる対話型専門知の保持者を、政策決定プロセスに参加させることができているのか。

もし、こうしたことができていないのだとすれば、社会システムとしてそれを可能にするようなスキームを今後どのように設定していくべきなのか。検証が必要な事柄は非常に多い。

そして、メディアも、今回の問題において自らが果たすべき役割を果たしていると言えるのかどうか、反省が求められてくるだろう。

森田 長太郎 オールニッポン・アセットマネジメント執行役員/チーフストラテジスト、ウォールズ&ブリッジ代表

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もりた ちょうたろう / Chotaro Morita

慶応義塾大学経済学部卒業。日興リサーチセンター、日興ソロモン・スミス・バーニー証券、ドイツ証券、バークレイズ証券、SMBC日興証券などで30年以上にわたりマクロ経済、金融・財政政策、債券需給などを分析し、2023年10月から現職。グローバル経済、財政政策、金融政策の分析などマクロ的アプローチを行うことに特色がある。機関投資家から高い評価を得ている。著書に『日本のソブリンリスク 国債デフォルトリスクと投資戦略』(東洋経済新報社・共著、2011年)、『国債リスク 金利が上昇するとき』(東洋経済新報社、2014年)。

 

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