日本製鋼所が挑む"脱原発"の構造転換 鉄鋼業界にも飛び火したシェールガス革命の熱気

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造粒機の市場規模は全世界でも年間100億~400億円程度と、決して大きくない。ただ、大型造粒機は、ダウケミカルや三井化学など、川上の化学メーカーの認証を受けた企業しか作れない。世界の年産台数はせいぜい数十機程度だが、1機の価格は10億円を超える。日本製鋼所を含め、神戸製鋼所と独コペリオンの3社でほぼ世界のマーケットを3分割している。

巻き返しへ体制整備

井澤さんの肩には社運もかかっている。日本製鋼所は原子力発電所の圧力容器で8割超と圧倒的な世界シェアを誇る。ただ、東日本大震災以降は原発推進の見直しや円高が打撃となり、業績は低迷してきた。

圧力容器など鋼材を加工する素材・エネルギー事業は、2013年度に30億円程度の部門赤字に陥ったもよう。一方で気を吐くのが、産業機械セグメントだ。プラスチックの成型機械などの受注が好調で、2013年度の受注は過去最高を更新している。「利益率は案件次第」(井澤さん)というが、納期が1年超の注文生産品のため、採算はかなり高いとみられる。

日本製鋼所は、リーマンショック後に閉鎖していた米ヒューストンの事務所を昨年6月に再開。「今まさに、契約の佳境です」と井澤さんは意気込む。生産拠点のある広島製作所にあるテクニカルセンターでトレーニングやメンテナンスの研修体制を整え、競合に出遅れた分の巻き返しを急ぐ。

対する神戸製鋼所も黙っていない。鉄鋼やチタンなど金属事業で培った技術を投入し、耐腐食、耐摩耗制に優れた大型造粒機を導入し、さらなるシェア拡大を狙っている。

“原発銘柄”と株式市場からもてはやされた日本製鋼所。シェールガスへとスムーズなシフトチェンジができるか。北米をめぐる戦いは熱気を帯びる一方だ。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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