なぜシェールガスはカベにぶつかっているのか 世界平和研究所主任研究員の藤和彦氏に聞く

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米国カリフォルニア州のシェールガス鉱区(ロイター/アフロ)
2013年12月20日、大阪ガスは、テキサス州で進めていたシェールオイル・ガス田開発で想定通りの生産ができないと判断、290億円の特別損失(投資総額330億円)を計上すると発表した。北米のシェールオイル・ガスは、中東へのエネルギー依存度の高い日本にとって、調達先の分散という意味で、大きな期待が寄せられていた。大阪ガスは日本企業として初めてシェールガス開発に直接投資に乗り出し、資源の上流に食い込み、安定調達を図ろうとしたが、頓挫した格好だ。
海外での資源開発では石油をはじめ銅、亜鉛などの非鉄金属を含めて日本企業は痛い目にあい続け、なかなか収益が出るところまでたどり着けない歴史がある。シェールガスについても同じ道をたどることになるのだろうか。また、原発の再稼働が見込めない中で、エネルギー調達コストが上昇を続け、国富の流出が止まらない。LNGなど足元を見られた高額取引を強いられている一方、老朽火力をフル稼働させ続けるリスクや、CO2排出に対する国際世論の批判も大震災から3年近い月日がたつなかで、無視できない状況になり始めている。
こういった中で日本のエネルギー政策の取るべき道はどこにあるのか。公益財団法人 世界平和研究所主任研究員の藤和彦氏に聞いた。

――大阪ガスの特損計上は、シェールガスの限界を知らしめました。

大阪ガスは、米国で初めて認可された日本へのシェールガス輸出プロジェクトに参画や鉱区開発への直接投資を行うなど中心的な役割を演じてきた。今後も鉱区を閉鎖せずに生産・販売を続ける意向だが、当初期待していた量を確保できず、この先、開発リスク懸念が高まるだろう。

苦境に陥っているのは日本企業ばかりではない。2013年10月には、ロイヤル・ダッチ・シェルが240億ドルを投じた米国のシェールガス事業が失敗に終わったとの観測が高まっている。英ブリティッシュ・ペトロリアムもすでに21億ドルの評価損を計上しており、「不良鉱区」をつかまされた海外のオイルメジャーの間ではシェールガス・ブームは一気に冷え込んでいる。

シェールガスは安いものではない

――なぜそのようなことになったのでしょうか。

藤 和彦 ふじ・かずひこ 公益財団法人世界平和研究所主任研究員。1960年愛知県生まれ。84年通商産業省(現・経済産業省)入省、エネルギー政策等に携わる。2003年内閣府出向(エコノミック・インテリジェンス担当)、11年から現職に出向。近著に『シェール革命の正体』(PHP研究所)。

要因は極めて簡単で、シェールガス自身は決して安い化石燃料ではないからだ。成分は在来型の天然ガスと同じだが、掘削が困難なため採算性の面から石油メジャーですらその開発に二の足を踏んできた。

ところが、シェールガスが喧伝されると、ベンチャー企業が投資家から資金をかき集めて開発・生産競争に走ったために、米国の天然ガスは大幅な供給過剰となった。その結果、指標価格であるヘンリー・ハブ価格が12.17ドル(百万BTU当たり、2008年6月時点)から2.68ドル(2012年5月時点)に急落し、日本で「シェールガスは安い」という誤った認識が広がった。

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