「ポスト安倍」に菅官房長官が急浮上する事情 安倍首相の気力が低下、高まる菅氏への期待

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安倍首相は8月24日に連続在任記録が歴代1位となるが、すでに7年8カ月を超える菅氏の官房長官在任日数には、政界関係者のほとんどが「永遠に破られない記録だ」と驚嘆する。

菅氏が長期間、首相の女房役で官邸の大番頭、さらには霞が関の人事を仕切る「影の総理」という重要な役割を着実にこなしてきたのは、「鉄壁ガースーと呼ばれるガードの固さと、黒衣に徹する姿勢によるもの」(政府筋)との評価からだ。

2019年4月の新元号発表をきっかけに、「令和おじさん」として国民的人気が爆発し、その後の7月参院選や9月の党・内閣人事でも影響力の大きさを誇示した。その結果、自民党内では「ポスト安倍の最有力候補」(自民幹部)との声が広がった。

国会閉幕後に息を吹き返す

ただ、好事魔多し。菅氏の側近として初入閣した菅原一秀、河井克行両氏に公選法違反疑惑が持ち上がり、それぞれ経済産業相、法相を辞任した頃から与党内でも菅氏への批判が拡大。安倍首相との不仲説も取り沙汰され、徐々に影響力が削がれた。

その後も、桜を見る会の私物化疑惑での国会答弁や記者会見での迷走でさらに精彩を失い、1月末から本格化した政府のコロナ対応でも、担当相に指名された西村康稔経済再生相の影に隠れる場面が続いた。

コロナ対応では、4月7日の緊急事態宣言発出時も含め、安倍首相が会見して説明することが定着し、政府のスポークスマン役からも実質的に外れることになった。「政策決定でも、いわゆる官邸官僚に主導権を奪われた」(自民幹部)とされ、存在感が薄れていた。

その菅氏が息を吹き返したのは、国会閉幕後だ。安倍首相が6月18日の会見を最後に直接国民に訴えることがなくなり、専門家会議の存廃問題や都道府県各知事との意見対立で西村氏も右往左往。与党内でも菅氏の指導力への期待が高まったからだ。

隙間風が目立っていた安倍首相との関係も、6月19日に安倍首相と菅氏、麻生太郎副総理兼財務相、甘利明自民党税制調査会会長が会談して修復をアピール。これをきっかけに、菅氏自身も自民党を取り仕切る二階俊博幹事長と連携を強め、政権運営の主役として影響力を復活させた。

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