タブー恐れず忖度しない「攻めるテレビ」の期待

制作者側の思考停止、想像力欠如にモノ申す

バリアフリー・バラエティーが問いかけるのは?(写真:Fast&Slow/PIXTA)

人種的偏見を拡大する放送がダメなことは、放送局で働く人間なら百も承知のはず……なのにNHK「これでわかった!世界のいま」(6月7日放送回)で、米国の黒人差別をわかりやすく伝えようと作成した「怒る黒人」の解説アニメが人種差別と批判を浴びて炎上、NHKは全面謝罪した。

『GALAC』2020年9月号の特集は「モノ言う番組の力」。本記事は同特集からの転載です(上の雑誌表紙画像をクリックするとブックウォーカーのページにジャンプします)

この問題はなぜ起きたのか? 筆者はニュースを解説する報道番組だったことが背景にあると見ている。多くの報道番組は、VTR後にキャスターらが「正しいこと」を短めにコメントするだけのスタイルがほとんどだ。要は一方通行で、双方向の議論はない。「どのように考えるべきなのか」や「ほかにどんな考え方があるのか」について十分に時間をかけて話し合い、視聴者に考えさせるような過程がない。考えない→思考停止→想像力の欠如。それが制作者側にも広がっている背景なのだと思う。

「なぜなのか?」を考えず、結論だけつまみ食いして済ませようとする思考停止。前向きな結論をと、予定調和ばかり優先させる番組づくり。こうした安直な作業を繰り返してきたツケで、どういう表現ならば差別や偏見につながらないのかというデリケートな問題を考えられなかったのではないか。もしも「世界のいま」の番組スタッフが2月にNHK Eテレが放送した「バリバラ〜障害者情報バラエティー〜」(以下、「バリバラ」と記す)の「BLACK IN BURAKU」を見て差別について思いをはせたなら、格差にあえぐ黒人をマッチョで暴力的なキャラとして描く表現を避けられたはずだと、筆者は思う。

建前でなく本音でテーマに迫る

この「バリバラ」のような、「視聴者に考えさせるテレビ」は最近では珍しい。だが、稀少でも存在感を発揮している。それらは“タブーに挑戦する”ことをいとわないという共通点がある。形式張った報道番組ではない。情報番組ですらない。バラエティ形式で深刻な問題も「笑い」に包み込み、議論して本質に切り込むのが特徴だ。建て前でなく本音でテーマに迫る。

その代表格は「バリバラ」と、TBSテレビの「サンデー・ジャポン」。両番組とも、「やらかした芸能人」も「やらかした政治家」も「ジャーナリスト」も「生きづらさを抱えた人」も、そして出演者たちもみな同じ等身大の人間として扱い、自虐の笑いに包み込む姿勢で一致する。政治も芸能も社会ネタも、温かいユーモアを交えていろいろな視点を提供し、差別される側など弱い者の立場を「大真面目に考える」というのが特徴で、こうした「攻め」の姿勢を貫いている。

かつてそこらじゅうにあった「井戸端会議」をテレビで復活させ、テレビが本来持つジャーナリズムの精神を、報道番組よりも発揮する回がある。時には下品な下ネタも交えつつ、予定調和ではない知的でスリリングなトークの空間が誕生する。

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