一流のタクシー運転手さんとは
さて、世界各国のタクシー運転手さん事情を書きつづってきたわけだが、一流のタクシー運転手さんとはどのような方だろうか。まず最短距離で、最短の時間で効率的に、そして安全に運転してくれる、というのは基本であろう。これに加え、案外、小さな配慮で乗車後の気分が大きく変わるものである。
たとえば朝のラッシュアワーに急いでタクシーに乗って会社のミーティングの30秒前とかにオフィスについて慌てているときに、「いってらっしゃい、今日も1日頑張ってね!!」などと声をかけられると、ずいぶん励まされるものである。また、寒い冬にホテルに到着したとき、一流の運転手さんは支払いが済むまで気を利かせてドアを開けず、タイミングを見計らってくれるのだ。
逆に二流というか三流の運転手さんは、道を知らないばかりかナビも使えず、おまけに正直に最初に言ってくれたらいいのに“きちんと行けます”と安請け合いして、お客さんに大迷惑をかける。そして右往左往して道を間違って運行した分も立派にチャージするという、上記のタコ八郎に外見が似ている運転手さんのことを指している。
中高年の雇用の受け皿としてタクシー業界があるのはわるくないが、ドライバーの方のサービス・クオリティコントロールのできている会社を、一流のタクシー会社には目指してほしいものである。
末筆になるが、この横並び画一サービスが義務付けられているかのような日本のタクシー業界、本来ならば小型車の中古車で半額サービスをしたり、逆に高級外車で倍くらいの値段でサービスを提供したり、車内で飲食物を販売したり、長距離大幅ディスカウントを導入したり、空港往復の定期を販売したり何かと新しいサービスが出てきてもいい気がするが、変化がないのが残念だ。
ちょうど4月29日に、格安運賃で営業する初乗り500円のタクシー会社、「ワンコインドリーム」が、国に値上げを強制されている問題で訴訟を起こしたと報じられたが、吉岡和仁社長の戦いを、グローバルエリートの弟子であるブラザー・キムは、レマン湖のほとりからこっそり応援させていただきたい。
タクシー業界の“岩盤規制”とまでは言わないが、フジツボ規制と呼べるほどなかなか取り除けない規制の数々に経営の自由度が阻まれている間は(ちなみに日本はこういう規制で発展を阻まれた産業が非常に多い)、タクシー業界の発展にむけた民間の努力も水泡に帰してしまうのだろうか。
サービス向上に努力する企業や消費者の利益をないがしろにして、既存の価格設定に守られたタクシー業界の政治圧力に屈するのか、大阪地裁と規制緩和をうたう現政権の、責任ある対応に注目したい。
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