サンマーク「全員ヒット編集者」の絶妙な仕掛け 植木社長「社員に借りがあり、報いるのが会社」
――ありきたりな言葉ですが、人への投資ということでしょうか。
そうですね。ソフト産業の場合、人の力がすべてだという側面が強くあります。人をベースにしていろんなものが生起するんです。どんな仕事でも基本はそうなのでしょうが、とくにソフト産業の場合それが重要です。ですから、社員への還元は将来への投資と考えています。
人材投資という観点から言うと、社長に就任してから、ドイツのフランクフルトで開催される世界最大のブックフェアを社員全員に経験してもらうことにしました。ブックフェアというのは本の見本市のことで、世界各国の出版社が書籍を出展し、版権を売買する場です。一度に全員というわけにはいきませんが、毎年、順次、社員を送り出してきました。
ですが、それはいい本を見つけて版権を獲って国内でヒット作を生むというような成果を求めてのことではありません。社員が最高のモノに触れる、経験する、機会を提供するのが目的です。
ですから、ブックフェアだけでなく、現地の市中観光や美術館見学などもコースに入れ、面白い街だから行ってこい、帰りにはパリに寄ってムーラン・ルージュでラインダンスでも見てこい、と言って送り出します。その辺のスピリッツが大切だと思うのです。
2017年には社員全員で海外研修を行いました。イタリア、スペイン、ハワイ、アメリカの4つのコースから希望の場所を選び、現地で書店を視察してくる研修です。
成果を求めない海外研修からのヒット
――全員ですか?
はい。ハワイには家族連れで行った社員もいました。前の年にヒット作に恵まれたからできたのですけどね。
ところが、ひょうたんから駒というか、成果は何も求めない海外研修のはずが、そこから意外な形で海外でのヒットが生まれました。