サンマーク「全員ヒット編集者」の絶妙な仕掛け 植木社長「社員に借りがあり、報いるのが会社」

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大ヒット作にはどれもドラマがあり、この本も例外ではありません。企画から、執筆、販売戦略など、どの段階にも血のにじむような努力がありました。初版は7000部で、担当編集者は本音では2回増刷がかかればと思っていたそうですが、「本屋大賞をとりたい」と大ぼらを吹いていました。そして、ノミネートという形でしたが、それは大きな成果につながりました。

最高の仕事といい人生

――社長就任当時はかなり財務面で厳しかったそうですが、数年間で立て直し、自己資本比率を60%にまで回復されたと伺っています。就任後、どのようなことに最も注力されてこられましたか。

植木宣隆(うえき のぶたか)/サンマーク出版 代表取締役社長。1951年、京都に生まれる。1976年、京都大学文学部独文科を卒業。株式会社潮文社を経て1978年、サンマーク出版の前身である株式会社教育研究社に入社。戦後2番目(当時)の大ヒットとなった春山茂雄著『脳内革命』(410万部)をはじめとして、久徳重盛著『母原病』や船井幸雄著『これから10年 生き方の発見』などを企画編集。編集長として、また経営者として、この25年で8冊の単行本ミリオンセラーに恵まれてきた。ライツの海外販売にも早くから取り組み、サンマーク出版の海外発行総部数は累計2500万部となっている。2002年より現職(撮影:尾形文繁)

一言で言うと「社員に報いる」ということです。先ほども申し上げたとおり、それは枻川前社長時代からの社風でもありますが、社長を継いだ後に2006年頃から1、2年かけて経営理念を再構築していく中で、方針として明確にしました。

会社勤めをしている社員の大半は、ほとんどの時間は仕事に費やし仕事本位の生活をしています。つまり、社員は会社に貸しを作っているのだと僕は考えていました。ですから、会社には社員に借りがあるわけで、それに対して報いる会社でなければならないと思いました。

――具体的に言うと?

例えば、年度目標を達成したら有給休暇のほかに1カ月間の特別休暇を社員全員に与える制度ですね。前社長の時代からの制度です。それから、3年前からは、介護休暇制度も新設しました。在職1年以上の社員であれば120日間の介護休暇を取ることができます。社員50人規模の企業では希有なことだと自負しています。

借りのある社員に対し、社員やその家族に何かあったときには、会社が支援に回るのは当然のことだと思うのです。また、このようにして取り上げられることで、介護休暇を社会に広めていくことも重要だと考えています。

産休も育休も当たり前ですし、介護や育児の必要のある社員は休暇のほかにも在宅勤務やフレックス制で働けるなど、柔軟に対応できる人事制度にもしています。簡単ではありませんが、「最高の仕事といい人生」を目標にしてやってきました。もちろん、財務が健全でなければできないことですが、財務と人事の両輪があって初めて創造的な仕事ができるのだと思います。

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