イスラエルに注目する世界、取り残される日本 私たちは「中東のシリコンバレー」を知らない
「富岳」は、基本性能だけでなく、産業向けアプリケーション、人工知能、ビッグデータと3部門でも1位を獲得したのである。ビジネスでも有用とお墨付きを得たのである。実際に、理研も「ベンチマークで1位を取ることを目的としたのではなく、あらゆるアプリケーションで最高性能を出すことを目指した開発であった」ことを強調しているが、蓮舫議員の指摘を意識してのことだろう。
その「富岳」のCPUに英ARMが採用されたことは「富岳が世界一になった」ニュース以上に筆者にはインパクトがあった。ARMは知る人ぞ知る黒子企業だ。スマホの世界では90%以上のシェアを有するリーダー企業だ。インテルですら、その牙城を崩すことはできない。しかし、一般にはほとんど知られていない。
「中東のシリコンバレー」を知らない日本人
ITの世界にはARMのように技術力と製品力の両方を有する、一般には知られていない黒子企業が多数存在する。そのメッカとしてシリコンバレーが知られている。日本の大企業がこぞってシリコンバレー詣でをするのは今に始まったことではない。
ところが、もう1つのメッカであるイスラエル詣でをする日本企業はごくわずかだ。人口1000万人弱、四国ほどの面積にすぎない小国に、グーグル、マイクロソフト、インテル、アップル、フェイスブックなど世界の名だたるIT企業が開発拠点を置いている。中東のシリコンバレーと呼ばれるゆえんである。実用的な技術開発だけではない。ノーベル賞を受賞者も12人を数えている。
それなのに、イスラエルという国について、われわれ日本人はほとんど知らない。高校の世界史ではイスラエルが建国された現代史など時間不足で飛ばされてしまう。しかし、単に高校教育の問題だけではない。そもそも、日本という国全体がイスラエルについて無知・無関心といってよいだろう。
それはイスラエルに進出する日本企業の数にも表れている。イスラエルに進出する日本企業はわずかに30社前後、在留邦人も1000人程度といわれている。日本で知られていなくて当然だ。ちなみに、筆者がアメリカ東海岸に住んでいた1980年代後半、ニューヨークの日本人学校の生徒だけで4000人を超えていたように思う。
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