「ポスト安倍」で激突、河野&西村両大臣の明暗 首相レースは大混戦、今秋が勝負どころか

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専門家会議は、新たな対策本部の分科会に主要メンバーを残留させたが、議事録公表も含めて分科会の内容は不透明となり、会議後の会見も行われていない。7月に入って東京を中心にコロナ第2波とみえる感染拡大が続いているが、政界では「専門家会議の廃止は政府の隠蔽体質の表れ」(共産党幹部)などの批判も相次ぐ。

国会閉幕後は安倍首相がコロナ会見に応じなくなり、一連の批判が西村氏に集中している。

ポスト安倍レースで競い合う

防衛とコロナという国家的課題への対応で明暗が分かれる河野、西村両氏だが、ともに57歳で同学年。当選回数は河野氏8回、西村氏6回だが、両氏は自民党が衆院選で惨敗して政権を失った際の2009年9月の総裁選にそろって出馬するなど、当時から若手成長株としてのライバルでもあった。

この総裁選には自民党政調会長などを歴任した谷垣禎一氏が出馬。対抗馬と目された石破茂氏らが不出馬を決めたため、河野、西村両氏に出番が回った。特に西村氏は、首相退陣後の蟄居中だった現首相の安倍晋三氏の代理出馬との見方もあった。

総裁選の結果は国会議員199、地方票300の合計で谷垣氏が圧勝。獲得票は河野氏144、西村氏54だったが、議員票では西村氏の43票が河野氏の35票を上回った。ちなみに、西村氏の推薦人代表は現在、厚労相としてコロナ対策でコンビを組む加藤勝信氏だった。

その両氏が競い合うことで、混戦模様のポスト安倍レースの一角に食い込みつつあるのは事実だ。両氏とも閣僚としての注目度は高く、有力政治家としての存在感も高まっている。

河野氏は陸上イージス停止宣言に前後して、コロナ禍に対応する医療従事者らを激励するための航空自衛隊ブルーインパルスの飛行を都上空で実施して、都民らの大喝采を浴びるなど話題作りにも余念がない。

一方、西村氏は首相の腹心だが、所属する細田派には下村博文党選対委員長や稲田朋美幹事長代行、萩生田光一文科相ら、将来の首相を目指すライバルが多い。ただ、総裁選への出馬経験があるのは西村氏だけで、派内でも「総合的評価は西村氏がトップ」と期待する向きもある。

祖父の河野一郎元建設相、父の河野洋平元衆院議長が果たせなかった首相の座を目指す河野氏は、アメリカの名門大学卒業という有力政治家としては変わり種。一方、西村氏は東大法学部卒で、通産省(現経済産業省)からの政界入りしたエリートだ。どちらも選挙区での人気は高く、「よほどのことがない限り落選の不安はない」(自民選対)とみられている。

ここにきて、ポスト安倍レースには10人近い候補が浮上し、大混戦の状況だ。その中で、麻生派所属ながら、菅氏とも近い河野氏は、石破、岸田両氏に次ぐ「第3の候補」として「大逆転で首相」(自民若手)との声も出る。一方で西村氏は、最大派閥・細田派のホープではあるが、「ポスト安倍へのハードルは高い」(同派幹部)のが実情。8月か9月に予想される党内閣人事での処遇も含め、河野、西村のライバル関係は「これからが勝負どころ」(自民長老)とみる向きが多い。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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