「ポスト安倍」で激突、河野&西村両大臣の明暗 首相レースは大混戦、今秋が勝負どころか

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河野氏は、自ら秋田、山口両県を訪れて知事や関係者に謝罪。自民党国防関係合同会議では、2019年夏の参院選秋田選挙区で同党現職が落選したことにも言及し、「本当に取り返しがつかない」と声を詰まらせながら謝罪するというパフォーマンスも繰り返した。

一方、コロナショックの深刻化を受けて、安倍首相が西村経済再生相をコロナ担当相と兼務させたことで、西村氏がコロナ対応の前面に躍り出た。それまで、国会答弁も含めて政府対応を一手に引き受けていた加藤勝信厚労相に代わって、西村氏は政府の責任者としてメディアにも積極的に出演している。「西村氏の顔をみない日はない」(政府筋)という活躍ぶりで、国民的知名度を一気にアップさせた。

ただ、自信満々の多弁ぶりが、「おしゃべり大臣」(官邸筋)と揶揄されるなど、政府与党内での批判も噴出。4月の政府の緊急事態宣言時に休業自粛要請の対象業種などをめぐって小池百合子都知事と激しく対立した際は、「社長だと思っていたら、中間管理職だった」と痛烈に皮肉る小池氏に「事実上押し切られる結末」(自民幹部)となった。

謝罪と苦しい釈明を迫られる西村氏

西村氏の言動が非難されたのが、6月24日の記者会見でコロナ対策の「専門家会議廃止」発言だった。ほぼ同じ時間に専門家会議の脇田隆字座長(国立感染症研究所所長)や尾身茂副座長(地域医療機能推進機構理事長)らが記者会見している最中で、記者団から西村発言を問われた尾身氏が「それは知りませんでした」と首を傾げた。

尾身氏らは「会議の発展的解消」は知っていたが、自分たちの会見に合わせたように西村氏が「廃止宣言」するとはまったく予想していなかったとされる。与党内からも「そんな話は聞いていない」(公明党幹部)と批判が相次ぎ、国民の間からも「専門家会議に失礼だ」との声があがった。

このため、西村氏は6月28日の記者会見で「『廃止』という言葉が強すぎた。専門家会議の皆さんを排除するように取られてしまったことも反省している」と謝罪と苦しい釈明を強いられた。

尾身氏は安倍首相の会見に同席し、具体策の説明役となる一方、同氏を含めた専門家会議メンバーが会見で「接触の8割削減」「新しい生活様式」などのキーワードを説明し、法的位置づけを超えるコロナ対策のリード役を果たしてきた。

24日の脇田、尾身両氏らの会見は、政府対策本部と専門家会議の関係を検証することが目的だった。脇田氏らは専門家会議の一連の活動が「前のめりだった」などと反省する内容の文書を説明していたが、「その最中の西村氏の廃止宣言はまさに不意打ち」(専門家会議関係者)だった。

与党内には「専門家会議が政府とのあつれきを公表することを懸念した西村氏が、先手を打つ形で廃止宣言したのでないか」(公明党幹部)との疑念が広がった。

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