温室効果ガス25%削減に挑む--従業員を意識改革! 不況でもCO2削減幅を拡大するイオン
小売業である同社では、日々の売り上げを各店でグラフ管理している。そこで「電気のような漠然としたものは、見えるようにしないとわからない」(土谷氏)と、1年前に電気使用量もグラフで管理するよう各店に義務づけ。同時にベスト20とワースト20を発表し、優良店は表彰する仕組みを取り入れた。
「優良店とワーストを発表することには最初反対だった」というのは杉浦氏。雪が降ったり、新たな機材が搬入されたりと店舗には個別の事情がある。それを「言い訳にしてしまい、電気使用量削減への意欲が薄れてしまわないか」(杉浦氏)と懸念したのだ。
だが心配は徒労に終わった。電気使用量はみるみる減っていったのだ。不利な状況があっても、「小売業で働く人の性質で、店舗競争となればみんな頑張る。知恵を働かせ解決するようになった」(杉浦氏)。
郊外SCでは、平日は来店客が少なくなり、屋上駐車場の利用者はほとんどいない。ならばと、屋上へのエスカレーターを止めた。開店前に全館でつけていた照明も不要な部分を消灯。また館内照明だけで十分明るい場所の自動販売機は照明を消すなど、各店の従業員発案の削減策は多岐にわたる。
だが最初から従業員が納得して動いたわけではない。目標数値を設定した後の「最初2回の店長会議はケンカだった」と杉浦氏は振り返る。
1991年以来、出店時には従業員がこぞって植樹活動を行うほどのイオンでさえ、「環境保全活動は忙しいときには邪魔になるもの」という意識があった。売り場の照明削減を提案したときには、「食品売り場は明るいほどよいというのが常識。照明を減らせば商品がおいしく見えなくなる」と反発が集中。そのため「最初は店長に内緒で、売り場の照明を間引く実験をした」(土谷氏)ほどだ。
ただ売り場の照明を減らしてみると、これまでの“常識”が必ずしも正しくないことがわかった。商品に照明は必要でも、通路には過剰にいらない。照明を減らすことで、逆に商品と通路のコントラストが鮮明になり、商品がより強調されて見えるプラス効果もある。この結果を受けて、売り場照明の見直しは急速に拡大した。「エコロジーがエコノミーにつながることを、従業員が気づいたことも大きい。削減目標を引き上げてほしいという部署も出てきたほどだ」(土谷氏)。