コロナで考えざるをえない自分や近親者の生死 生命は究極的に制御不可能でありいずれ終わる

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コロナ禍と世代間ギャップについて考える(写真:ロイター/Kim Kyung-Hoon)

新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的流行)は、収束の兆しが見えないどころか、気が緩みがちだったわたしたちの日常に再び暗い影を落とし始めている。7月に入って東京都で1日100人以上の新規感染者数が続くなど、全国で再び感染拡大を始めており、これが高齢者や特定の疾患を持っている者などハイリスク層へ拡大した場合、医療提供体制が逼迫することが懸念されている。

専門家の間では、第2波、第3波のほうが第1波に比べて病原性が高くなる可能性が指摘されており、今後の状況次第ではハイリスク層の範囲が予想外に広がる恐れすらあるだろう。医療提供体制の逼迫は、すでに緊急事態宣言下で経験したとおり、救急医療をはじめ通常の外来診療や手術などにも支障を来す。要するに、「自分はハイリスク層ではないので大丈夫」では済まないのである。

最悪は「命の選別」をも容認する風潮に加担

だが、いまだにパンデミックを「特定の世代」「特定の疾患を持つ者」にとっての災厄とみて、程度の差こそあれ他人事のように受け流してしまっている人々は多い。これが最悪の場合、「命の選別」をも容認する風潮に加担するのである。

これは決して日本だけにとどまる話ではなく、世界各国で多かれ少なかれ表れている傾向だ。アメリカに基盤を持つ国際的な人権NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチは、すでに4月時点で高齢者に対する人権侵害があることを訴えていた。

ウイルスによる深刻な症状や死亡のリスクが高いことに加えて、差別が高齢者の権利を脅かしている。新型コロナウイルスの経済的影響を論じた英国のある新聞のオピニオン記事には、高齢者の死が「高齢扶養家族を減らせる」ので、有益かもしれないと書かれていた。ウクライナの元保健相は3月22日のインタビューで、65歳以上の人びとは「すでに遺体」であり、政府は新型コロナウイルス感染症対応を「まだ生きている」人に集中すべきだと述べた。(新型コロナウイルス感染症の対応 高齢者の人権侵害も/2020年4月7日/ヒューマン・ライツ・ウォッチ)

「65歳以上の人びとは『すでに遺体』」という言葉は非常に衝撃的ではあるが、日本でも、高齢者が集中治療を若者に譲ることを想定した意思カードが話題になった。「新型コロナウイルス感染症で人工呼吸器や体外式膜型人工心肺『ECMO(エクモ)』などの高度治療を受けているときに機器が不足した場合には、私は若い人に高度医療を譲ります」と記載されたもので、賛否両論を呼んだために記憶している人もいるだろう。

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