教員が危惧する「大学ニューノーマル」の大問題 5つの論点から探る"コロナ後の大学像"

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日本女子大学では「manaba」というクラウド型教育支援サービスを導入しており、これが役立っている。ネットを通じて小テストやレポートを課し、採点もできる。同システムを運用する朝日ネットによれば、全学で利用している大学等の数は97校(2020年4月現在)。立教大学などでは同様のシステムである「Blackboard」を使用している。

問題は、実験や実技・実習だ。

工夫次第では遠隔授業システムを使った模擬体験なども可能だが、後期に授業を移動させたり、夏期集中授業に変更している場合も多い。教育実習も実施時期が延期されているケースが少なくない。

ただ、多くの場合、今夏あたりでコロナが収束の兆しを見せ、後期は通常授業となることを想定している。したがって、コロナが収束せず、冬を迎えて再び感染拡大が懸念されるような事態になると、コトは深刻だ。

通常の授業であれば後期も遠隔で行うことも不可能ではないが、学生の学習意欲・学習効果が持続するかは未知数。在学意欲をそぎ、退学者の増加を招かないかという懸念もある。

今年4月に入学した1年生がまだキャンパスへ足を踏み入れたことのないという大学も多いだろう。当然、部活やサークル活動は制限されている。大学に入って、サークル活動をしたり、学食で仲間と食事するといった「青春を謳歌する」ことを夢見て大学に入った若者が、自宅で毎日のようにパソコンで学習する姿は気の毒だ。

現状を長く続けることは、大学で学ぶ意義を自問自答する事態にもなりうる。こうした状況がニューノーマルになれば、大学の存在意義は大きく揺らぎかねない。

逼迫する在学生の懐事情

② 在学中の学業継続困難者への対応

周知のように、日本の大学の学費は高い。私立大学では毎年100万円程度か、それ以上の学費がかかるのが一般的だ。国立大学の学費も年々上昇しており、私大との差が縮まってきている。

親元などからの通学ではない場合、生活費も高額となる。一方で、保護者の収入が減ったり、学生自身のアルバイト収入が減ったりして、学費が払えないという声が大きくなっている。

そもそも通学できず、授業も遠隔授業で、図書館や学食などの施設も使えないのに、なぜ授業料や施設設備費を満額払わなければならないのかという、消費者としての学生の声も聞かれるようになった。さらに、遠隔授業によってIT機器の導入コストや通信費が増大することも、学生の不満の一因となっている。

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