教員が危惧する「大学ニューノーマル」の大問題 5つの論点から探る"コロナ後の大学像"

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こうした状況を受けて、大学が自ら費用を捻出し、3万~10万円程度の現金給付を一律に全学生に行うことを表明したところも多い。また、PCなどIT機器の貸出制度を設けた大学もある。さらに学費猶予・減免・延納を認めたり、大学独自の奨学金制度の充実をしている場合がある。しかし、これらは大学経営を圧迫する要因になりうる。

国も対応している。日本学生支援機構を通じた「『学びの継続』のための『学生支援緊急給付金』」や「高等教育の修学支援新制度」などだ。ただし、コロナ禍の影響が長引くと、在学生にどのような影響が出てくるかは未知数だ。

公正な入試をどうやって維持するか

③ 入試の方法や時期をめぐる混乱

大学の社会的な責任を考えた場合、公正な入学試験を行うことは不可欠だ。AO入試や推薦入試も増えているが、大学の一般入試は試験日を決めて会場内で時間内に筆記試験を行うスタイルが基本だ。

入試時期となる1〜2月になっても新型コロナ収束の兆しが見えない場合、例年のように入試を実施できるかは不透明。もし不可能ということとなれば、大学にとっては一大事だ。職場やレストランなどでは3密を防ぐために、レイアウトを変えたり、席を減らしたりしているが、受験生が多数いる大学ではそうした配慮も容易ではない。

通常時でも教職員総出で、ほぼすべての教室を使って入試業務を行う大学は多い。そうした中で、例えば1教室当たりの受験生を半分にしようとすれば、その分、教室の確保や試験官の配置が必要になる。

それが無理ならば、試験日を増やすことになるが、これもまた簡単ではない。試験日を増やした分、試験問題も新たに作らなければならないからだ。再度の感染拡大によって緊急事態宣言が発出され、県境をまたぐ移動が制限されるような事態になっていたら、影響はより深刻になる。

また、入試当日に発熱や咳などの症状がある受験生への対応も、頭の痛いところだろう。追試などの措置も必要になるとみられる。

ちなみに、大学入学共通テストの本試験日程は来年1月16、17日。これまで1週間後に東京と大阪で行ってきた追試験は、2週間後の同月30、31日に全47都道府県で実施するという。また、新型コロナ対策の休校による学習の遅れを理由に、追試を受験することも可能にするという。

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