1日300斤売れる「ねこねこ食パン」誕生の裏側 単なる「かわいさ」狙いじゃない緻密な仕掛け
近年、勢いを増す「高級食パン」だが、この猫の形の高級食パンは、どのように誕生したのか。
田島社長は、「商品開発をするときは、通常3、4個の流行のキーワードを掛け合わせて行っております。1つ目は、まず高級食パンのブームがこの5~6年続いていること。2つ目は、ペットフード協会調査で、猫の飼育数が2017年以降犬を上回り、猫好きが多くなっていること。そして、スマートフォンの普及でSNS文化が定着して伸びているので、写真映えする仕掛けを、と意識して決めました」と話す。
狙いは当たった。しかも、既存ブランドと比べて、ツイッターやインスタグラムへの反応が大きいことから、愛着を持つ客の割合が非常に高いことがわかるという。
インスタでも、飼っている猫の柄をデコレーションする、キティちゃんや猫バスなどのキャラクターに模したデコレーションにする、イチゴなどフルーツを飾るなど、アレンジしたパンの画像が大量に投稿される。そのエンゲージメントの高さを根拠に、「ここ1~2年でメインブランドのアンティークを超えるぐらいに成長させたい」と語る田島社長。
高級食パンブームに乗るために
実はねこねこ食パンは、同社がこれまでに積み上げた経験を投入した渾身の新ブランドである。
その最大のポイントは、これがパンのプロとして、満を持して開発した高級食パンであることだ。高級食パンのブームは、2013年に東京・銀座に開いた食パン専門店の「セントル・ザ・ベーカリー」に連日行列ができ、大阪で「乃が美」が展開し始めてから続いている。
その後、「銀座に志かわ」や「俺のベーカリー」ほか、さまざまなチェーンや個人店が誕生。異業種からの参入も目立つため、パンとしての品質にはばらつきがあった。
ブランドとして認知されたところはともかく、便乗商売が成功する保証はない。そして、ブームはいずれ終息する。新たに参入するなら、定着するのに必要なものは何か見定めること、あるいはブームに陰りが見えたときにすぐ撤退ができるかどうかが重要なポイントだ。
ブームを横目で見ながら、田島社長は本職をパン屋とする自社で何ができるか、ずっと考えていたという。
「いいアイデアが浮かばず数年経つうちに、アンティークで人気の1斤421円のあん食パンが少しずつ売れなくなってきました。今まで、あん食パンを手土産にされていた人が、ライバル店の高級食パンを買っているのではないか。何か対抗策を、と考えているうちに、パンの形を変えることを思いついた。アンティークブランドには猫のキャラクターがあることから、猫の形の食パンを作ろうと考えました」(田島社長)
差別化を図るため、濃厚感のある商品にした。材料に加える水分は牛乳100%にして、はちみつ、バター、そしてマスカルポーネチーズを加えた。小麦粉は国産小麦を使用。型作りから始め、オーブンの焼き方を調整するなど試作には3カ月を要した。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら