1日300斤売れる「ねこねこ食パン」誕生の裏側 単なる「かわいさ」狙いじゃない緻密な仕掛け

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オールハーツ・カンパニーとしての目標は、「ネスレみたいな世界一の食の企業を作ること」と言う田島社長。店を始めたばかりの頃は、疲弊するほど労働時間が長く忙しかった。小さい店でその問題を解決するのは難しい。そのために規模拡大を目指した。

5月には東京・自由が丘に「ねこねこチーズケーキ」の店を出した。チーズケーキは1個1800円(写真:オールハーツ・カンパニー提供)

現在、8ブランドで社員は500人、パート・アルバイトを入れると3000人の企業に成長。

福利厚生を充実させ、安定的にボーナスを払えるようになった。有給消化率も、業界の中ではかなり良好と言えるほど伸びている。

ねこねこ食パンは、堅実経営を続けて合併先から経営ノウハウを学んだ同社が、久しぶりにゼロから立ち上げた商品なのである。

ロイヤルティー・加盟金負担少なく加盟できるように

そこへ始まったコロナ禍の危機は、むしろ出店を加速させることで乗り切ろうとしている。それだけでなく、飲食業の仲間が苦しんでいるのを見て、緊急対応としてロイヤルティーや加盟金負担が少なく加盟できる形を作り、ねこねこファクトリーへの業態チェンジを提案したところ、すでに数社から引き合いがあるという。

会社を大きくすることで、顧客や従業員とその家族、取引先の幸せを目指してきた同社は、飲食業の仲間も助けようとしている。

コロナ禍で、厳しい環境に置かれた企業は多い。そのために、就職内定が取り消された学生、首切りにあった非正規雇用の人や育休切りにあった人がたくさん出ている。しかし、新型コロナウイルスがいくら猛威を振るっても、永久に続くわけではない。遅かれ早かれワクチンや薬もできるし、過去の感染症でもそうだったように終息する時期は来る。

その遠くない将来のために、今は準備するときだ。経済を再生させるのは人である。今まで貢献してくれた人たち、技能がある人たち、やる気のある人たちを今、守る方策を講じる企業は、その後のポテンシャルが高いのではないだろうか。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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