日本で「シュトレン」が人気化した納得の事情 作り手にとっては「1年の集大成」だった

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日本でも人気店のものは、早い時期から売り切れるほど市民権を得ている「シュトレン」(写真:Alex9500/PIXTA)

パン屋で、ケーキ店で、百貨店で、スーパーで。先月末あたりから、やたらと「シュトレン」なるものを見掛けないだろうか。シュトレンとはドイツ発祥のクリスマス菓子で、表面に粉砂糖などをまぶした、ゴツゴツした見た目が特徴だ。

中身は、小麦粉生地を発酵させたパン菓子で、ドライフルーツやナッツなどが練り込まれている。もともと、キリストの誕生を待つ4週間の待降節(アドベント)の期間、少しずつ切って食べるもので、その間、味が徐々に変わっていくのが楽しめる。

11月末~12月上旬に店頭に並ぶシュトレンだが、日本でも人気店のシュトレンは予約が殺到したり、行列ができたりするほど。「シュトレン食べ比べ」イベントも各地で行われており、パン祭りで人気の「青山パン祭り」も、12月17日から2日間にわたって全国のパン屋のシュトレン25種類の食べ比べができるイベントを開催。フリマアプリ「メルカリ」でもこの時期になると、売り切れ済みのシュトレンや、自ら作ったシュトレンを売る人たちやパン屋などが出てくる。

なぜシュトレンはブームになったのか

固いパンに粉砂糖をまぶしたような見た目のシュトレンにはハッキリ言ってクリスマスケーキのような華やかさはない。この形は、おくるみに包まれた幼子、イエス・キリストを模したとか、断面が似ていることからドイツ語で坑道を意味する「シュトレン」になった、などと言われている。

発祥の地はドレスデンほか諸説あるが、文献に残る最古の記録は1329年、現在のザクセン地方にあるナウムブルクの司教へのクリスマスの贈り物だ。日本では、1969年に福岡県の老舗洋菓子メーカー、千鳥饅頭総本舗がシュトレンのレシピをドイツから持ち込み、売り出したのが最初だとされている。

一般に知られるようになったのは、鳥越製粉のドイツパン研究会やパン屋が集まるドイツパン・菓子勉強会などが、地道に広報活動を行ってきたことに基盤がある。そこへパンブームが起こり、2014年から青山パン祭りで食べ比べが行われて注目され、シュトレンブームが始まったと思われる。

背後にはグルメ文化の大衆化がある。今の日本は誰もが、おいしいものを体験し、それを批評したい人であふれている。食べ比べはイベントの手法としても魅力的だし、仲間で集まりパーティを開くきっかけにもなる。そういう感想や発見を気軽にSNSでシェアできるようになったことも、シュトレン人気を後押ししたのだろう。

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