日本で「シュトレン」が人気化した納得の事情 作り手にとっては「1年の集大成」だった

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次は黄色っぽいきび砂糖で覆われた、カタネベーカリーのもの。長さ約15㎝と小ぶりだが、ずっしりと重い。ナイフを入れると、ざくっとした音がシュトレンぽい。「お酒の香りがする。ナッツも香ばしい」「フルーツの味もしっかりする」「具だくさんで、登山やキャンプに持っていけそうですね」などの感想が出た。

大量のきなこに栗、と和風なシュトーレン(編集部撮影)

パレスホテルの「ボーネン・シュトーレン」は、ファンも多いという和風の商品で、和三盆糖ときな粉で覆われ、中に栗や黒豆などが練り込まれている。シュトレンは本来保存食だが、これは早めに食べるよう指定されている。なんといっても、きな粉と栗の個性が強く、甘味も強い。従来のシュトレンの概念を覆す風貌と味で、「和菓子みたいでお年寄りが喜びそう」との声も出た。

「インスタ映え」しそうなシュトレンも

雪のような粉砂糖と、ピスタチオが見た目に楽しい(編集部撮影)

365日のシュトレンは、唯一冷蔵保存を勧められた。切った際、分厚い粉砂糖の層がパリッと音を立ててはがれ、「鏡割りをしたお餅みたい」と声が上がる。食べてみると「サクッとしている。食べやすい」「フレッシュ」「一番パンに近いのでは」「スパイスも効いている」との感想が出た。切ったときに、断面にピスタチオの緑が目立つのも「インスタ映えしそう」との意見も。

大人受けしそうなシュトレン(編集部撮影)

一方、洋菓子店のシュトレンは、ベーカリーのものとはどう違うだろうか。アステリスクのものは、「お酒の香りがパッと立つ」「日が経つにつれておいしくなりそう」「子どもにはちょっときついかも」「これは人に自信を持っておすすめできる」と、洋菓子店ならではの食感や味を評価する声が多かった。

5つのシュトレンは、見た目の印象も生地の色合い、中に入っている具材、食感、味わいともさまざま。食べ比べると、シュトレンに対する考え方も、客層も異なることが伝わり、店の個性がよくわかる。価格の違いは、店のブランド意識、使う材料や手間を反映していると考えられる。シュトレンは、店を選ぶ指標になりそうだ。

シュトレン、といってもその個性はさまざまだ(編集部撮影)

日本では、クリスマスやバレンタイン、ハロウィンといったヨーロッパの祭りや風習が、企業の宣伝戦略に乗って広まった。シュトレンも、本来の目的と少しズレていきながら、新たな日本の消費文化として定着していくのかもしれない。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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