日本で「シュトレン」が人気化した納得の事情 作り手にとっては「1年の集大成」だった

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しかし、カタネベーカリーで今年作る見込みは500~600個。多い年でも800個程度しかない。手間がかかるので、たくさん作るのが難しいからだ。その結果、人気店で早く売り切れる希少性が生じ、ブームを加速させているのだろう。

では、どのように手間がかかるのか。今年のカタネベーカリーの作り方を聞いた。

使う小麦粉は、付き合いがある北海道の農家の全粒粉とフスマ。中に入れるオレンジピールは、併設するカフェで出すオレンジジュースに使った無農薬の柑橘類の皮を、店で乾燥させたもの。ほかに米国産のオーガニックレーズン、オーガニックのサルタナレーズン。これらのドライフルーツをスパイスのシナモン、カルダモン、メースと一緒に酒に漬け込む。期間は長くても1週間。

人気店のシュトレンを食べ比べてみた

カタネベーカリーのシュトレン(編集部撮影)

生地作りは、小麦粉にイースト、自家培養した酵母を加えて発酵だねを作るところから始まる。よつ葉の発酵バターをよく練り、発酵だね、小麦粉を加えて混ぜ、漬け込んだドライフルーツ、シチリア産のアーモンド、自家製のマジパンを加えて混ぜた後、生地を発酵させる。生地に塗る澄ましバターも作る。透明になった上澄み液に、焼き上がったシュトレンをくぐらせ、粗熱が取れたら粗めの砂糖をまぶす。完全に冷めたら、パウダー状のきび砂糖をまぶしてようやく完成だ。

「ほかのパンと比べて、工程が長いんですよ。それも価格が高い要因だと思います」という片根氏。一つひとつの工程の工夫が腕の見せどころでもある。「日本ではシュトレンの文化がもともとあったわけじゃない。だから逆にいろいろ変えられるのでは」と片根氏は分析する。

本当にそんなに違うものなのか。そこで、今回パン好きがそれぞれシュトレンを持ち寄り、食べ比べをしてみた。今回持ち寄ったのは、パンチェーン大手、アンデルセンの「マンデルシュトレン」(1620円)、カタネベーカリー(1400円)、同じく渋谷区にあるベーカリー「365日」(2505円)、丸の内・パレスホテル東京の「ボーネン・シュトーレン」(2700円)、代々木上原の人気ケーキ店、アステリスク(1600円)の5点(すべて税込価格)。

パウンドケーキのような食感(編集部撮影)

まずは、アンデルセンから。見た目は白い粉に覆われたパウンドケーキ。シュトレンはさくさくした触感もその特徴のひとつだが、どちらかというと、しっとり感が強い。ナイフで切った感触もパウンドケーキ的だ。「あまり甘くなくて食べやすい」「クセが強くないから、家族で食べられそう」といった声が上がった。

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