コロナ禍で急成長「独立系ネット書店」の正体 「ブックショップ」は第2のアマゾンになるか
1月、小さな出版社を経営するアンディ・ハンター氏が大手通販サイトの「アマゾン」を向こうに回して独立系のオンライン書店を立ち上げたとき、書店業界では懐疑的な見方が大半だった。
独立系書店のポータルを作ろうとする試みは以前にもあったが、アマゾンからシェアを削り取ることはほとんどできなかった。大手書店チェーンの「バーンズ・アンド・ノーブル」ですら、アマゾン相手に苦戦を強いられている。
ハンター氏は、まだ開拓の余地があると考えていた。アマゾンから売り上げをほんの少しでも奪い取ることができれば、独立系書店にとっては相当な金額になる。自身が立ち上げた「Bookshop(ブックショップ)」の年間売上高は2年以内に3000万ドル(約32億円)に達する可能性があるとハンター氏は投資家に説明したが、あまりに楽観的な予想にあぜんとする投資家も少なくなかった。
パンデミックという予想外の追い風
そして3月、新型コロナウイルスの感染が拡大し、アメリカ中の書店は休業を余儀なくされる。オンラインや電話での注文を処理するのに自分の店に入ることすらできなくなった書店主が大量に生まれ、その多くがこの新しいサイトに参加した。
ブックショップの売上高は今年、4000万ドルを突破する見通しだ。ハンター氏が2022年までに達成したいと考えていた金額を大幅に上回る。5月にはおよそ450万ドル、6月には最初の2週間で700万ドル以上もの本を売り上げた。参加書店数は750を超え、ブックショップはこれらに360万ドルを超す収益をもたらした。今年後半にはイギリスに進出する準備を進めており、書籍卸大手のガードナーズ・ブックスと提携する予定になっている。
「うまくいくのかどうか、懐疑的な意見は多かった」と、首都ワシントンで書店「ポリティックス・アンド・プローズ」を共同経営するブラッドリー・グラハム氏は話す。「ブックショップは確かに予想以上にうまくいっている。パンデミックが起こるなんて、誰も予想していなかったから」。