コロナ禍で急成長「独立系ネット書店」の正体 「ブックショップ」は第2のアマゾンになるか

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ブックショップを避ける書店もある。ロードアイランド州プロビデンスにある書店兼バー「リフラフ」は3月に休業した際、ブックショップを利用するのではなく、オンライン注文が容易になるようにウェブサイトの仕様を急きょ見直した。

「この第2のアマゾンに顧客を奪われるリスクは冒せなかった」と、リフラフの共同経営者、エマ・ラマダン氏は話す。

独立系書店を助ける目的でスタート

ハンター氏がブックショップのアイデアを思いついたのは、10年近く前、非営利のデジタル出版社で文芸誌『エレクトリック・リテラチャー』の編集長をしていたときのことだ。独立系書店がネット通販に適応できずに苦しんでいる様子を、彼は警戒しながら見ていた。しかし、ハンター氏の計画を支持する人はほとんどいなかった。

そして2018年初頭、その後、独立系メディア「カタパルト」やウェブサイト「Lit Hub(リテラリー・ハブ)」の発行人を務めるようになったハンター氏は、ABAの代表者と会合を持つ。

ABAは独立系書店向けに運営していたオンライン通販サイト「IndieBound(インディバウンド)」をどう改善すべきか、ハンター氏に意見を求めた。ハンター氏はまったく新しいサイトをゼロから立ち上げてはどうかと提案した。地元の書店を応援したい人々に向けたシームレスなオンライン通販サイトだ。客は特定の店を選択して本を購入することもできるし、「ブックショップ」のサイトから本をダイレクトに購入することもできる。

注文は大手書籍卸のイングラムを通じて処理され、顧客に直接発送されるため、店舗は在庫を抱えたり、管理したりする必要はない。書店の取り分は定価の30%と直接販売より小さくなるが、在庫や配送に関する費用はかからない。

ブックショップは、特定の店の販売から利益を得ていない。直接販売とアフィリエイト経由の販売がブックショップの収益源だ。アフィリエイト経由の販売は、各種メディア、ブッククラブ、ソーシャルメディアサイトの書評などに張られたブックショップのリンクが入り口となる。

アフィリエイターは現在8000を超え、その中には「ニューヨーク・タイムズ」、文芸誌『ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス』、オンラインメディア「バズフィード」、隔週刊の総合誌『ニューヨーク・マガジン』などが含まれる。

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