「がんが治る」保証ないニセ情報が危険すぎる訳

間違った治療を選択しても責任は患者にある

「やってはいけない がん治療」の実態とは?(写真:Chinnapong/iStock)

新型コロナウイルスに関してさまざまなニセ情報が飛び交い、人々を翻弄している。とくにSNSなどで拡散されたのが、「食事で新型コロナを予防できる」という情報である。「納豆」「オリーブ葉エキス」「マヌカハニー(蜂蜜の一種)」「海藻」「ミドリムシ」「各種ビタミン」などの名が挙がるたびに、関連商品の品切れが続出した。

国立健康・栄養研究所では、30種類におよぶ食品について調査を行い、「新型コロナウイルスに対する効果を示した食品・素材の情報は見当たりません」という見解を公表している。実は、がん治療においても、同様のニセ情報が飛び交っていることをご存知だろうか。

水素で、がんも新型コロナも治る?

「誰もが知っているグローバル企業の元社長に、あなたの身体が心配だから使ってみないか、と勧められました。やんわりお断りしましたけれど、自分に効果があったのでぜひ使ってほしいと。がんが再発しないか心配している、とあつくおっしゃるので、断りきれなかったのです」

数年前、がんの手術をした会社経営者の自宅に配達されたのは、「水素ガス吸入器」だった。大きめの電気ポットのような形状で、爆発しない濃度にコントロールされた水素を吸入できるという。

そして元社長の部下からは、次のようなメールが届いた。

「無料レンタル期間は1カ月間です。効果を感じたら購入して下さい。価格は70万円です」

この製品を販売している会社のホームページには、「水素ガスががん患者さんのQOL(生活の質)の改善やがんの退縮効果を示すのは事実です」と記載されている。

医療機器ではない製品が「効能効果」をうたうことは、医薬品医療機器等法で禁じられている行為だ。この会社は、「中国では新型コロナの治療に水素が使用されている」という紹介もしている。

「試しに使用してみましたが、効果は何も感じられませんでした。相手の機嫌を損ねないように平謝りして、製品は返却しています」(会社経営者)。

市販されている「水素吸入器」は、数万円から約160万円の製品まで、多くの企業が参入しているが、あくまで家庭用であり、臨床試験で有効性が確認された「医療機器」ではない。

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